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Mise en oeuvre du brevet unitaire Européen : conséquences du Brexit (août 2016)

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欧州統一特許制度 、欧州統一特許裁判所制度施行の見込み(2016年8月)

2016年6月23日のイギリスで行われた国民投票で決定したBrexit。現在EU加盟国首脳とイギリス首相との間で欧州統一特許に関するEU規則にEU加盟国以外の国が加盟することを認める追加議定書が交渉されているが、フランスをはじめとするEU各国首脳は、イギリスが移民とEUの「人の移動の自由」原則に反対する以上、欧州単一市場への参加も認めないという厳しい立場を取っているため、2017年2月に予定されていた欧州統一特許制度、統一特許訴訟制度 (通称「特許パッケージ」) の施行はさらに延期されることととなった。イギリスは過去40年以上統一特許制度の制定に深く関わってきたが、今後イギリスでの欧州統一特許施行の見込みは不透明である。


欧州統一特許制度、統一特許訴訟制度案のこれまでの歩み

統一特許制度の創設案は最近始まったものではなく、1972年10月5日のミュンヘン条約から5年後の1975年のリュクセンブルク条約で、EU全域に適用される特許制度の創設が提案されていた。しかしこの案は長年日を見ることなく、2000年8月になってようやく欧州委員会によりEU全域で統一の特許制度、共同体特許の制度の案が提示された。その後欧州特許裁判所の制度についてしばらく討議がまとまらなかったが、2007年になると欧州委員会は欧州特許裁判所の創設と統一特許訴訟制度についての具体案を提示し、2009年12月のEU競争力閣僚理事会で統一特許制度と統一特許訴訟制度についての合意が採択され、2010年から2012年を通じて欧州委員会により同制度を実施するためのEU規則の案が具体化されてきた。

1. 欧州統一特許制度はなぜ必要となったか

現在ヨーロッパで発明を保護するためには、2つの方法がある。1つは発明を保護させたい特定の国の特許庁に特許を出願し、その国の内国特許のみを取得する方法、もう1つはミュンヘン条約の38加盟国(cf.アルバニアとセルビア)全部または1部の国について、欧州特許庁にとして1つの出願をし、欧州特許を取得して指定国各国の特許とする方法である。

保護の必要な特定の国の内国特許のみを取得する手続を行う場合には、各国の特許庁に出願を行わなければならないため、各国での言語の違いや、また特に権利取得の基準の違いから、手続が非常に煩雑になる。このデメリットを軽減し、手続をより簡素化するために、ミュンヘン条約で制定された欧州特許制度では、欧州特許庁に対する1つの手続で、英語、フランス語、ドイツ語から1つの言語を選択して複数の加盟国で登録される特許を取得することができるようになったが、現行の制度の下では欧州特許庁で欧州特許が付与された後、特許の効果は指定国それぞれにおいてその国の法令に基づいて独立に発生する(=欧州特許制度は各国の特許の束)ため、特許権者は欧州特許が指定する国に欧州特許庁の公式言語(英語、フランス語、ドイツ語)が公用語でない国が含まれている場合、欧州特許の明細書ないしクレームを特にロンドン議定書非加盟国ではその指定国ごとにその国の言語に翻訳して提出しなければならず、複数の国で欧州特許を取得するためには何万ユーロも費用がかかってしまうという問題がある。また特許維持年金も各国の特許庁ごとに支払の手続を行う必要があり、さらに特許の有効性も、各国の国内特許としてその法令に基づいて判断され、新規性や発明行為といった特許の有効性の審査基準が各国ごとに異なることから、同じ特許の有効性の問題について各国で異なった、または矛盾した査定が下され、法的保護が十分でないと批判され、またさらに特許侵害の場合に権利者は侵害国ごとに別個の訴訟を提起しなければならず、莫大な訴訟費用がかかることから、制度を改正しなければならないという動きがEU加盟国の中で強まった。

実際どのくらい欧州特許の訴訟費用がかかるかについて、フランス経済産業省は2000年に以下のようなデータを発表している〔レポートを読む〕。

          フランス        ドイツ                イギリス
簡単な特許侵害事件    427 000 €       500 000 €       1 000 000 €
難しい特許侵害事件 1 250 000 €   1 340 000 €        6 000 000 €
複雑な特許侵害事件 1 900 000 €   2 500 000 €       25 000 000 €

2. EUによる制度案の具体化

2009年12月、EU競争力閣僚理事会により統一特許制度と統一特許訴訟制度についての合意が採択されたが、イタリアとスペインが統一特許制度の公式言語を現在の欧州特許庁の公式言語である英語、フランス語、ドイツ語に限ることに反対し、欧州特許制度に異議を申し立てた。そのため2010年12月、EUの加盟国のうちイギリス、ドイツ、フランスを含む12カ国は欧州委員会に「強化された協力」(Coopération renforcée)の手続によりEU27カ国からイタリアとスペインを除いた25カ国で統一特許を制度化するEU規則を採択するよう要請し、2011年3月10日、欧州委員会の「強化された協力」によるEU規則の提案は欧州理事会で採択され、EU27加盟国からイタリアとスペイ ンを除いた25カ国がそれに参加する意向を表明した。そして2011年6月27日、欧州理事会は統一特許制度に関する「強化された協力」及び統一特許 制度に適用される翻訳に関する規則の2つの制度に関するEU規則案に関する一般指針を発表した。

3. 2012年12月の欧州統一特許制度に関する合意

2012年12月17日に採択された欧州統一特許に関する欧州議会及び理事会規則第1257/2012、及び欧州統一特許の翻訳制度に関する欧州議会及び理事会規則第1260/2012で定められた制度は、2016年8月現在以下の通りである。

なお統一特許制度の公式言語に意義を唱えていたスペインは欧州司法裁判所に提訴し、欧州統一特許に関する規則理事会規則第1257/2012と欧州統一特許の翻訳制度に関する規則第1260/2012の取消を請求したが、2015年5月5日の2つの判決(判決を読む)で却下され、イタリアは同年9月30日に「強化された協力」に参加した。

EU加盟国以外に欧州統一特許制度の適用を認める追加議定書が採択されない場合、同制度が適用されるのはBrexit後のEU加盟27カ国から、現在「強化された協力」に参加していないスペインとクロアチアを除いた25か国となる。


欧州統一特許制度 (Brevet unitaire européen)

①取得手続

欧州統一特許の出願、審査、異議申立、査定の手続は、欧州特許庁(EPO/OEB)において、現行のミュンヘン条約による欧州特許の出願、審査、異議申立、査定と同じ手続で行われる。

特許性(発明行為、産業応用性、新規性と進歩性)の審査基準は現行制度のそれが適用される。

審査の後、特許査定を受けた特許権者は、1か月以内に特許の効果について以下の選択を行う。

• 特許を統一特許としてその効果をEU加盟国全域にする
• 従来の欧州特許として各指定国の内国特許とする
• EU25か国全域プラスそれ以外の欧州特許条約加盟国の内国特許とする

特許権者がいずれの効果を選ぶかによって、査定後支払う翻訳費用が大きく異なってくる。

②翻訳に関する規則

現行の欧州特許制度のもとでは指定国それぞれで特許が付与されるため、特許権者は、指定国に欧州特許庁の公用語、すなわち英語、フランス語、ドイツ語が公用語でない国が含まれている場合、欧州特許の明細書とクレーム全文をその国の公用語に翻訳しなければならないため高額の翻訳費用がかかることが問題となっていたのに対し、欧州統一特許制度のもとでは、明細書とクレームを、出願を英語で行った場合にはフランス語かドイツ語に、フランス語かドイツ語で行った場合には英語に翻訳するだけで足りる。そのため新制度のもとでは欧州統一特許の取得費用は従来の欧州特許の3割まで低下し、欧州内外の中小企業や非営利団体、個人にとって欧州特許の出願がぐっと身近になることで、欧州経済の活性化につながると期待されている。

この翻訳制度は12年の暫定期間の間適用されるが、この間に高質の自動翻訳システムを開発し、その後は翻訳費用がかからないようにすることが計画されている。* 自動翻訳システムの開発はイギリスの会社に委託されていた。

特許料、特許維持年金は欧州特許庁が一括して徴収し、各加盟国との間で分配する。

③特許の効力

現行制度のもとでは欧州特許は各指定国の内国特許の束で、特許が指定するそれぞれの国でその国の法令に基づいて効力が発生するのに対し、統一特許制度では特許の効力はEU25か国全域に及び、それぞれの国で付与手続をする必要はない。

逆に特許を取り消す判決が下される場合、その無効判決の効力はEU加盟国全国全域に及ぶ。

従って、EU25か国全域に市場があり、特許性の強い特許を出願する企業や、翻訳費用をセーブしたい中小企業や個人は進んで統一特許を選ぶのに対し、特許性があまり強くなく、欧州特許が後日取り消されることを危惧する企業は、従来の欧州特許を選び、指定した国の内国特許として活用するオプションを取ることになる。


欧州統一特許裁判所 (Cour unifiée de brevet)

現行の欧州特許制度のもとでは、欧州特許侵害の場合、特許権者は指定国のうち侵害が発生した国ごとに訴訟を提起しなければならない。そのため高額の訴訟費用がかかることに加え、特許性の審査基準が各国で異なることから、同じ特許の有効性について各国で矛盾した査定が下されることがあり、原告である特許権者は自分に有利な判決が下される見込みのある国の裁判所に訴訟を提起し (いわゆる「フォーラムショッピング」)、いくつかの国でパテントトロールが残存してしまうという問題があった。

このような問題を解消し、欧州特許はひとつの裁判所で保護する、そして欧州特許の判例を統一して法的価値の高い判例を築き上げる、という考えから生まれたのが欧州統一特許裁判所である。

欧州委員会は、欧州統一特許訴訟制度についての合意の枠組みを決めた後、統一特許裁判所規則の編成をイギリス、フランス、ドイツの3国の専門家を主体に構成される委員会に委ねたが、現在統一特許裁判所に関する合意書規則案により定められている欧州統一特許裁判所のしくみは以下のようなものである。

①裁判組織

欧州特許と欧州統一特許に関する案件を裁く欧州統一特許裁判所は二審制で、第一審裁判所と控訴審裁判所がある。

欧州統一特許裁判所の判事は、特許専門の法律家としての養成を受けた判事と、技術家の養成を受けた判事の2種類の判事で構成され、裁判で裁判長となることができるのは法律的判事のみである。EU加盟25か国から募った判事候補者のリストが諮問委員会により作成され、行政委員会により6年の任期で任命される。判事の研修所はブタペストに設置されることになっている。

a) 第一審裁判所

第一審裁判所は中央部と地方部及び 地域部で構成される。

  • 地方部 (division locale)

各加盟25国に少なくとも1つ、扱う訴訟案件の多い国では最大3つ設置される。

判事の構成:3名の法律的判事。そのうち1年に50件以上の案件がある国では2名、それ以下では1名が自国の判事。技術性の高い案件では技術的判事を関与させることができる。

  • 地域部 (division régionale)

複数の加盟国が共同で設置する。

判事の構成:2名の訴訟当事者の国出身の法律的判事、及び1名の第3者国の法律的判事、計3名。技術性の高い案件では技術的判事を関与させることができる。

  • 中央部 (division centrale)

パリに設置される。
産業技術、繊維、電子工学分野の案件を管轄。中央部長:フランス人
支部:(* 2016年6月までロンドンとされていたがBrexit後、別の加盟国の都市に移転されることが決定)…化学、生命工学、金属工学分野の案件を管轄、ミュンヘン…機械、電気の分野の案件を管轄

事務局:ミュンヘン

判事の構成:2名の諸加盟国出身の法律的判事と1名の技術的判事、計3名


それぞれの部の管轄権は以下の通りである(欧州統一特許裁判所合意書第32条、第33条)。

  •  地方部と地域部

- 欧州特許と欧州統一特許の侵害訴訟
- 仮差止請求訴訟
- 損害賠償請求訴訟
- 先使用権確認請求訴訟
- ライセンスに関する訴訟

  •  中央部

- 欧州特許と欧州統一特許の無効審判請求訴訟
- 不侵害の宣言請求訴訟

侵害訴訟で特許無効の反訴請求が被告により提起される場合には、地方部と地域部は以下の3ついずれかのオプションを取ることができる(欧州統一特許裁判所合意書第33条(3))。
• 技術的判事を関与させて特許の有効性について判示する
• 特許無効の反訴請求を中央部に移管して侵害訴訟のみを裁く
• 当事者の合意により侵害訴訟と特許無効の反訴請求両方を中央部に移管する

b) 控訴審裁判所

ルクセンブルクに設置される。

判事の構成:3名の法律的判事と2名の技術的判事、計5名

控訴院の管轄権は中央部と同じ。

c) 調停、仲裁裁判所

以上の司法裁判所のほかに、調停、仲裁裁判所がそれぞれハンガリーのブダペストとスロベニアのリュブリャナに設置される。

d) 欧州司法裁判所(CJCE)の権限

欧州統一特許裁判所は、裁判所が適用しようとする特許分野での共同体法(例えばバイオ特許の案件でバイオ指令の規定など)を適用するにあたって、欧州司法裁判所(CJEU/CJUE)に先行判決を求めることができ、欧州司法裁判所の判決は欧州統一特許裁判所を拘束する(欧州統一特許裁判所合意書第21条)。これはEUの司法機関でない欧州EU特許裁判所がEUの法の解釈・適用を行う権限を持つことは、欧州連合条約の原則に違反するとした欧州司法裁判所 2011年3月8日判決 (欧州司法裁判所2011年3月8日判決1/09)を受けて付加された条項である。


②訴訟手続

完全施行前までの移行期間 と« Opt-out »

欧州統一特許訴訟制度には施行から7年移行期間が定められており、この間、欧州特許に関しては内国裁判所も欧州統一特許裁判所と並行して管轄権を持ち、原告は侵害訴訟を欧州統一特許裁判所に提訴するか、指定国の内国裁判所に提訴するかを選ぶことができるとされている(欧州統一特許裁判所合意書第83条)。

この移行期間後は原則的に欧州統一特許裁判所が欧州特許と欧州統一特許の侵害訴訟すべてを管轄することとなるが、欧州特許権者や欧州特許の出願者は、移行期間終了1か月前までに欧州統一特許裁判所の管轄権を適用しない旨の申請を裁判所の書記課に対して行うことができ、これは一般にOpt-outと言われている(欧州統一特許裁判所合意書第83条(3)。Opt-out手続の詳細については欧州統一特許裁判所規則第5規則参照)。Opt-outは訴訟提起前であればいつでも撤回することができる5欧州統一特許裁判所合意書第83条(4))。

欧州統一特許裁判所における訴訟手続は詳しく欧州統一特許裁判所規則で定められるが、大まかに言って書面による手続と口頭による手続とがある。

a) 書面手続

案件が裁判所に付託された後、訴訟当事者はそれぞれ2回まで訴状を交わすことができる。侵害訴訟の場合には、原告は原告の訴状の中で自らの請求を述べ、請求の根拠となる要素を提示する。被告は原告の請求に答える訴状を提出し、その中で原告の特許の無効を請求することができる。原告は被告の訴状に答える訴状を提出し、被告は原告の最後の訴状に答える訴状を提出する(欧州統一特許裁判所規則第12)。

訴訟言語

地方部、地域部…その所在国の公用語、または地域部を構成する加盟国が指定した言語。ただし加盟国は欧州特許庁の公用語(英語、フランス語、ドイツ語)の1つまたは複数を訴訟言語として指定することができる。

中央部と控訴審…特許が付与された言語

この書面手続と並行して、口頭手続前に判事が案件について完全に理解するために必要とされる場合には、案件が付託された地方部または中央部の3人の判事のうち1人が報告判事(judge-rapporteur/juge-rapporteur)として、暫定手続と呼ばれる手続を行う。報告判事はこの暫定手続の間、当事者に訴状で述べられたそれぞれの請求について口頭で説明をするための会議(仮法廷)を1回または数回開催する。

判事はこの暫定手続で当事者が報告判事の下で交わす議論をもとに口頭弁論の準備を行う。

b) 口頭手続

書面手続と暫定手続が終了すると、判事全員で構成される法廷における口頭弁論の日にちが定められる。最高1日とされるこの口頭弁論は義務的ではなく、当事者は書面手続のみで判決を下すことを裁判所に請求することができる5欧州統一特許裁判所規則第111-117)。

訴訟費用

裁判所に当事者から支払われる訴訟費用は、固定額係争額に応じて算定される額とからなり(欧州統一特許裁判所規則第370)、後者の訴訟費用の算定のため、原告は、その受けた損害が一定の額を超える場合には、その原告の訴状の中でその額を明記しなければならない(欧州統一特許裁判所規則第13)。

訴訟費用は原則的に先払制で、原告は原告の訴状の提出時に固定費用の支払いを裁判所の書記課に対して行う。係争額に応じて算定される額は、係争額が当事者間で定められる場合、当事者間で合意に至らない場合には暫定手続の中で報告判事が算定を行い、各当事者が支払う額を決定する。

欧州司法裁判所が財政的に加盟国から独立した機関でならなければないことから、訴訟費用は比較的高額となるといわれているが、中小企業は訴訟額の4割の減額を受けることができるほか(https://www.unified-patent-court.org/faq/fees)、所得額が一定の基準に満たない個人の当事者には裁判援助を申請することができる (欧州統一特許裁判所合意書第71条、欧州統一特許裁判所規則第375-382)。

損害賠償請求訴訟の特殊性

欧州統一特許裁判所のもとでの訴訟では、侵害訴訟や無効確認請求訴訟の中で損害賠償請求をすることはできず、損害賠償請求は別個に、特許侵害や特許の無効を認める本案判決が出てから1年以内に、勝訴した当事者によって提起されなければならない(欧州統一特許裁判所規則第125)。このように侵害確認請求や無効確認請求訴訟と損害賠償請求が分けられているのは、判事がそれぞれの請求で審理しなければならない要素が多いためとされているが、当事者にとっては訴訟費用がかさむため、損害賠償請求訴訟を分けることには批判の声も多い。