フランス民法の判例

別産制の夫婦が共同で購入した不動産資産に持つ権利

(破棄院第1院、2013年6月12日、上告番号11-26748、2013年9月25日、上告番号12-21892)

別産制(séparation de biens)は夫婦財産制のうち、婚姻前、婚姻中に得た財産、負った負債は全てその財産を得た、または負債を負った配偶者のだけのものとなる制度である。

別産制のもとでは、夫婦はそれぞれ婚姻前に自分が持っていた、または婚姻中に獲得した財産を管理・運用し、自由に処分する一方、それぞれ婚姻前に負っていた、または婚姻中に負った負債を一人で弁済する義務を負う。本制度の特徴は配偶者それぞれが経済的に自由であることにあり、特に配偶者のうち一人がリスクのある事業を営なんでいるような場合には、その債権者による債権回収手続から相手方配偶者の資産を守ることができるというメリットがある。

フランスで法定財産制の後得財産共有制で、婚姻中に夫婦それぞれが得た財産、または負った負債が夫婦共有の財産、または負債となるのと異なり(ただし相続や贈与により夫婦の一方が婚姻中に得た財産を除く)、別産制では、婚姻中に夫婦が得た財産は、その財産を購入し、所有権を証明する配偶者の固有財産となる。
どちらかの配偶者が所有権を持たない財産については、夫婦の共有所有物(bien indivis)として、民法1538条の規定により夫婦それぞれが半分ずつの権利を持つ。

しかしながら、別産制の夫婦が住居を一緒に購入して、どちらか一方が他方より多くの出資をする、または住宅ローンの返済を行う場合は少なくない。この場合、民法1538条の規定によって夫婦が50パーセントずつの権利を持つとすることに不均衡が生じることについて、多くの訴訟が提起されてきた。

別産制の夫婦のうち一方の配偶者が、共同で所有する不動産資産価値の半分よりも多くの出資をした場合に、離婚に際して自分の権利よりも多く行った出資分に相当する額の返済を相手方配偶者から受けられるか否かについて、破棄院はかつてそのような請求を認めていたが、2013年5月15日の第一院判決(上告番号11-26933)以降、破棄院は不動産購入を結婚生活のために必要な出費(contribution aux charges du mariage)に含めて扱っている。
民法1537条は別産制の夫婦は結婚生活のために必要な出費を夫婦財産契約に特段の条項がない限り民法の214条の規定に負担すると規定し、民法214条は夫婦はそれぞれが自分の能力に応じて結婚生活のために必要な出費を負担すると規定している。上記判決で破棄院は、夫婦のうち一方の配偶者が不動産資産価値の半分よりも多くの出資をした場合、それは単にその配偶者が自分の能力に応じて結婚生活のために必要な出費を支払っただけであり、それに対して返済を他の配偶者に請求することはできないという原則を打ち出した。

本件はこの原則を応用したものである。

第一の判決では、別産制の夫婦が共同で土地を購入し、その上に家を建てて家族の住居としていたケースで、離婚後住宅ローンを一人で弁済した妻が、元夫に対して、自分が不動産資産に持つ50%の権利に相当する額よりも多く支払った分の返済を請求していた。2009年5月13日の判決で、モンペリエ控訴院は妻の請求を認めたが、破棄院は2013年6月12日、控訴審判決を民法214条と1537条の規定に反するとして破棄し、案件をエクス・アン・プロバンス控訴院に移送する判決を下した。

第二の判決では、別産制の夫婦が婚姻中アパートを共同名義で購入したが、アパートの購入資金を一人で出資した夫が離婚後、元妻に対して妻が得る不動産資産の半分の価値に相当する額の返済を請求したケースで、別産制の夫婦財産契約にはっきりと夫婦はそれぞれが自分の能力に応じて結婚生活のために必要な出費を支払うこと、そしてそれぞれが行った出費について後日異議を申し立てることができないことが明記されていた。控訴院が夫婦はそれぞれ自分の能力に応じて結婚生活のために必要な出費を支払ったとして夫の請求を却下したのに対して、夫がアパートの購入資金を一人で出資し、それは自分が結婚生活を負担する分を超えていることを理由に上告を行ったが、破棄院は夫婦財産契約の明確な条項により、夫婦の一方が他方に対して能力に応じて結婚生活のために必要な出費を支払わなかったと主張することは禁じられていると判示し、上告を却下した。

これらの破棄院の判決により、別産制の夫婦が共同で不動産を購入した場合に、不動産資産価値の半分よりも多くの出資をした配偶者が離婚に際して相手方配偶者から出資の返済を主張するためには、自分が行った出費が民法214条にいう「自分の能力に応じた結婚生活のために必要な出費の支払」を超えていること、言い換えれば、自分の収入額に鑑みて不動産資産購入のために行った出費は通常の結婚生活のための出費義務を超えていることを証明する(または贈与の取消を請求する*)義務がある。

しかしながら、第二のケースのように、別産制の夫婦財産契約にはっきりと夫婦はそれぞれが結婚生活のために行った出費について後日異議を申し立てることができないことが明記されている場合には、たとえ不動産資産購入のために行った出費は通常の結婚生活のための出費義務を超えていることを証明したとしても、その出資の返済を請求することは不可能となる。従って、婚姻に先立ち別産制の夫婦財産契約を公証人のもとで作成する場合には、後日不動産資産を共同名義で購入する場合にその資金をどのように出すかを見越して、必要な条項を契約中に書き加えることが重要である。

 


*2004年5月26日の法律以降、婚姻中に行った夫婦間の贈与は離婚に際して取り消すことができない。従って自分の資金で夫婦の住居を購入した配偶者は、離婚にあたり夫婦の名義で購入した住居の名義を自分一人のものとするためには、それが2004年5月26日の法律の施行日である2005年1月1日前に行われたものであるか、民法953条で規定されている配偶者の忘恩(ingratitude)を証明する必要がある。