フランス知財法ブログ

* 日経BP知財Awaness (日経BP社) - "パリ発・フランス知財戦略"掲載記事 

 

フランスの知財侵害訴訟事情
要旨:日本では、海外での知財戦略というと、盗用行為を防ぐための知的財産の権利化とその運用に重点が置かれがちである。しかし、権利化された知財があえて盗用された場合の訴訟戦略については、各国における司法制度の複雑さ、そして日本人が訴訟をあまり好まないことから、多くは紹介されていないように思われる。しかし、知財侵害訴訟は迅速かつ効果的に進めることによって、かなりの経済的効果を望むことのできる訴訟であり、日本人は「知財を活かす」ことだけでなく、「知財訴訟を活かす」ことも重視すべきである。
フランスの知財侵害訴訟における損害賠償
要旨:フランスでは、エンフォースメント指令を国内法化する2007年10月29日法の施行以来、知財侵害訴訟で裁判所が侵害者に対して支払いを命じる損害賠償の額が増加した。以前は損害賠償額の算定にあたり、権利者が実際に受けた損害額のみをその基準としなければいけなかった。しかし、同法以後は権利者が実際に受けた損害だけでなく、侵害者が侵害品の販売により得た利益を考慮することができるようになり、さらに権利者が受けた精神的損害も損害賠償額に加えられることができるようになった。
企業における社員の著作権と著作権譲渡契約の重要性
要旨:「社員がその職務上製作した著作物は当然雇用主である会社のものとなる」、という「職務著作」の観念が当然とされている日本では驚かれるかもしれないが、フランスでは「著作権は職務上製作された作品、職務外で制作された作品を問わず創作の時点でその作者である社員のみに帰属し、法人である企業は著作者とはなりえない」、というのが原則である。フランスでは「職務著作」の場合にも、会社が社員の著作物を使用しようとする場合には、社員に給料とは別の報酬を支払って著作権の譲渡を受けなければならない。
香水の知的財産権による保護
要旨:世界の香水市場を率いるフランス香水だが、有名な香水の偽造品も多く、シャルル・ド・ゴール空港の税関で差し止められている偽造香水の数は、毎年27万個以上に上る。こうした中で、著名な香水の偽造品を防ぎ、偽造者を処罰するために、香水を知的財産権でどのように保護するかは、数年にわたりフランスの裁判所で議論されてきた。しかし、香水の“香り”は知的財産権では保護されず、知的財産権で保護されるのは香水の名前とボトルだけであるというのが、フランス最高裁である破棄院の現在の立場である。
フランス映画スターのギャラと実演家の著作隣接権譲渡のルール
要旨:なぜ欧米の映画俳優は何億円もの収入を得て、自家用飛行機を何台も持ったり島をいくつも買ったりできるのであろうか。それは、映画会社と結ぶ出演契約の際、必ず出演料とは別個に、映画の興行収益やその後のDVDの売上げに比例した歩合報酬が定められているからである。出演契約の際のこの歩合報酬の設定はフランス法では義務であり、それに反した報酬体系は違法とされる。
フランスとヨーロッパにおけるバイオ特許
要旨:バイオ企業がその研究開発投資の成果として経済的に発展していくことができるためには、バイオ関連発明を知的財産として法的に保護することが不可欠であるが、ヨーロッパでは、欧州特許庁(EPO)、内国特許庁共に、バイオ関連発明に対する特許出願に対し厳格な倫理審査基準を設けているため登録が難しいことが問題となっている。
フランス大統領選と違法DL取り締まり-HADOPIの終焉
要旨:HADOPIとは、2009年の2つの法律 (通称“HADOPI法”) と2009年12月31日の政令でフランスに新しく設立された、P2Pネットワーク 上の違法ダウンロード取り締まり機関である。法人格を持つ独立行政法人で、破棄院 、コンセイユ・デタ(国務院) 、会計院の代表9名から成る諮問委員会と、3名の職業判事から成る権利保護委員会 (CPD) で構成される。
ヨーロッパでの近現代美術作品の売買における「追求権」
要旨:追求権(仏:Droit de suite、英:Resale Right)とは、図表・造形美術(絵画や彫刻など)の作者である芸術家の著作権の一つで、芸術家が、自分の売った作品が他の者により転売されるごとにその売価から一定比率の報酬を受けることができるという権利である。ヨーロッパでは2001年9月27日の指令により全EU諸国に追求権が制度化された。
フランスと欧州におけるソフトウェア特許
要旨:フランスをはじめヨーロッパでは、ソフトウェアそれ自体に関する発明は特許を受けることができないというのが原則である。しかしながらプログラムの基となるアイデア(アルゴリズム)は著作権で保護されないことから、ソフトウェア産業による多くの特許申請がなされた。日米両特許庁におけるソフトウェア特許の認可の動向を受けて、ヨーロッパでも次第に判例でソフトウェア関連発明に特許を与えるため法律の条文を拡大解釈するための基準が設けられるようになってきている。