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フランス労働法の判例

雇用契約中の配転条項の有効性と労働者の一時的な配転が不当解雇となる場合

(破棄院社会部2014年7月9日判決、n°13-11906, Sté Euro Cargo Rail c/ M. et al. / 2010年2月3日判決、n° 08-41412, Sté Leader Price c/ L.)

フランス労働法において、使用者の都合による労働者の配転は、配転先が雇用契約で定められた勤務地と同じ地域である場合にのみ認められる。一方別の地域への配転は、雇用契約の変更となり、労働者の同意が必要となる。雇用者が労働者に遠隔地への転勤を命じ、その労働者が転勤を拒否したために雇用者が労働者を解雇した場合には、その解雇は不当解雇となり、様々な損害賠償金の支払の対象となる。

労働者の職場の変更の多い職種では、こうした問題を防ぐためにあらかじめ配転条項(clause de mobilité)が雇用契約の中に規定される。雇用契約に配転条項が記載されている場合には、労働者はそれを適用した雇用者の配転命令に従わなければならず、拒否した場合には解雇を正当化する過失を構成する。

フランスの判例では雇用契約の配転条項が有効となるためには、その配転条項は①明確に移転先を特定していること、そして②雇用者に一方的に移転先を拡大する権限を与えていないことが必要であるとされている(破棄院社会部2006年6月7日判決, n°04-45846, 2006年7月12日判決n° 04-45396, 2008年10月14日判決, n°06-46400)。例えば①の条件を満たしていない「雇用者に付随する全ての支社」への配転、「役職の必要に応じた」配転、「会社が活動を行う全ての領域」への配転、「会社の必要に応じた」配転を定める条項や、②の条件を満たさない「会社の組織の変更により支社や事務所の所在地は変更しうる」と記載した条項などは無効となり、こうした条項を適用して雇用者が労働者に配転を命じ、労働者が従わなかったため解雇した場合には、その解雇は不当解雇として裁判所により扱われる。

また配転条項は労働者により明示的に受諾されたことが必要であることから、雇用契約に配転条項がなく、就労規則(convention collective)に配転条項が定められている場合には、雇用者は労働者が雇用契約締結時に配転条項を定めた就労規則の存在を知っていた事実を証明する必要がある。労働者が雇用者による解雇を不当解雇として訴えた場合、労働者が配転条項を受諾していたことを証明する責任は雇用者にある。

一方、最近の破棄院の判例では、「フランス全土」への配転を規定した雇用契約中の条項は、その規定が明確に記載されており、その配転が労働者の役職から正当化されるものである場合には有効となるとされている(破棄院社会部2013年3月13日判決 n°11-28916、2014年7月9日判決n°13-11906)。後者の判決では破棄院は「役職の性質に従ってX氏は会社の必要性または業務から必要となる全ての配転を、フランス国土に限って行うことを約束するものとし、このような配転は雇用契約の変更として扱われないものとする」という雇用契約中の条項は配転先を明確に特定しているため有効であると判断し、この条項を適用した配転を拒否したX氏の解雇は不当解雇を構成しないとした。

労働者の雇用契約に配転条項が定められていない場合、または定められている場合でも配転条項で定められた配転先以外の勤務地に、一時的に労働者の職場を変更することができるか否かについては、従来の破棄院の判例では、そうした一時的な職場の変更が会社にとって必要であり、かつ労働者の従事する職務が一定の職場の変更を伴うものである場合には認められるとされてきた。2003年1月22日の破棄院社会部の判決(n° 00-43826)は、雇用契約に配転条項の定められていなかった工事現場の管理技術者が、雇用者から2ヶ月間通常の勤務地域から遠隔の地域に配転を命じられ、それを拒否したために解雇された事件に関するものであるが、破棄院は当該技術者の職務が一定の職場の変更を伴う職務であり、また技術者の職場の変更が雇用者にとって必要であったことを理由に、解雇は正当な理由に基づくものであると判断した。
しかしこの判例は破棄院社会部2010年2月3日判決で変更された。

本件では、雇用契約にChatou 市内、及びChatou 市近郊での勤務を予定する配転条項の定められたCasinoスーパーのカフェテリアの店員が、Leader Price社による同スーパーの買収後、Leader Price社から改修工事の間、Chatou 市から遠隔のSaint-Denis市への職場の変更を命じられ、それを拒否したため、解雇された。2008年ベルサイユ控訴審は、Saint-Denis市への職場の変更は店員の雇用契約の配転条項で定められた配転先を越えるもので、また雇用者による配転命令は配転の期間を明確にしていなかったとして、店員の解雇は不当解雇に当たると判決を下し、解雇された店員に対する様々な損害賠償の支払を命じた。

Leader Price社は従来の破棄院の判決を引用して、労働者の一時的な職場の変更が会社にとって必要であり、労働者の従事する職務が一定の職場の変更を伴う性質である場合には、配転条項で定められた配転先を越える一時的な移動は認められると主張し、同判決に対し上告を行ったが、2010年2月3日の判決で破棄院社会部は、配転条項に定められた配転先以外の勤務地への労働者の一時的な移動が雇用契約の変更を構成しないためには、以下の3つの条件を満たすことが必要であるという原則を打ち出した。
(i) その職場の変更が会社にとって必要であり、
(ii) 特別な事情に基づいていること、
(iii) 職場の変更の事実とその明確な期間を労働者に対し十分な期間を置いて事前に通知すること。

本件においては、Leader Price社による店員に対する職場の変更の通知は職場の変更の期間を定めておらず、また予定されていた職場変更の2日前に通知されたものであり、認められないとして、上告を却下した。

本判決による破棄院の判例変更により、以後、雇用契約に配転条項が定められていない労働者、または配転条項に定められた配転先以外の勤務地に労働者を一時的に職場の変更することを必要とする雇用者は、労働者の職務が配転を伴うものであると主張することはできず、一定の期間を置いて、明確な職場の変更期間を定めた通知を労働者に対して行うことが必要となった。