不動産法の判例

 

賃貸借契約中の解除条項: レフェレの既判力について

要旨:商事賃貸借契約中には多くの場合、借主が契約義務に違反した場合、特に家賃の支払が滞った場合の解除条項が規定されている。家主は借主に契約書中の解除条項を適用する催告書を通達して1か月を経過しても借主が契約義務を履行しない場合、賃貸借契約を解除して借主を退去させるためには、解除条項の発効を確認する裁判所の判決を得る必要がある。家主は解除条項の発効を確認する請求をレフェレの手続で行うことができるが、レフェレの仮判決には既判力がないため、たとえ仮判決が執行力を持つものとなっても、借主は本案訴訟を裁判所に提起し、善意を証明して家賃の支払期限を請求することができる。

商事賃貸借における家主の引渡義務 - 法令等の基準に合った設備工事費用の負担

要旨:商事賃貸借契約中に特別の条項がない場合、安全、衛生や障害者の円滑利用等の法令が定めた基準に合うための設備を物件に施す工事の費用は家主が負担する義務がある。この種の工事を借主に負担させるために商事賃貸借契約中に特別の条項を規定する場合には、その条項はどのような工事が借主の負担かを明確かつ具体的に規定するものでなければならず、包括的に借主が「法令や規則で必要となった工事を負担する」と規定するだけでは不十分である。家主が工事義務を怠ったことにより借主が損害を受けた場合には、家主は借主が受けた損害を賠償しなくてはならず、家主の過失で契約が解除となる場合には借主から支払われた家賃を返済しなくてはならない。
2014年6月18日のPINEL法では、商事賃貸借契約中に法令等の基準に合った設備工事費用を借主の負担とする条項を設けることが民法606条で規定される大工事に該当する設備工事に関して禁止された。

商事賃貸借契約における家主の管理費清算義務

要旨 : 法律で家主が負担する管理費や税金と借主が負担する管理費や税金が細かく規定されている住宅賃貸借と異なり、商事賃貸借契約においては家主と借主の管理費や税金の負担分は契約書で自由に規定することができる。ただし契約書に諸管理費や税金を借主の負担とする条項が規定されている場合には、家主は契約書に定められた方法で管理費を清算して実際に自分が支払った管理費や税金と照らして借主が四半期ごとに前金として支払った管理費の額が正当であることを証明する義務があり、家主がこの管理費の清算義務を怠る場合には借主から支払われた管理費の返還が命じられる。2014年6月18日のPINEL法では、家主による管理費の清算義務が強化され、商事賃貸借契約書に契約対象の物件にかかる全ての管理費と税金、手数料の明細書を添付すること、及び家主による毎年の管理費清算が義務づけられたほか、それまで借主に負担させることが認められていた一部の管理費や税金を借主に負担させることが禁止された。

外国人顧客に対する公証人の職業責任

要旨:公正証書を作成する公証人は、顧客に対して適切な助言を行う専門家責任があるが、フランス最高裁は公証人は、顧客がフランス語能力が不十分な外国人である場合に公正証書の署名前に通訳による補佐を助言して顧客が証書の内容を理解していることを確かめる義務があるとしている。本件ではフランス語能力が不十分な外国人が会社の債務の連帯保証人となった案件で、その外国人が公正証書に署名する際に通訳による補佐を助言しなかった公証人に過失が認められ、公証人に対し倒産した会社の全債務の支払について連帯保証人に代わって責任を負うことが命じられた。