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フランス知的財産権法の判例 

グーグルアドワーズによる商標権侵害訴訟

破棄院商事部、2010年7月13日、上告番号08-13944(Google c/ GIFAM), 06-20230(Google c/Vuitton), 06-15136(Google c/ CNRRH), 05-14331 (Google c/ SA Viaticum)、リヨン控訴院、2012年3月22日(Google c/Jean-Baptiste D.V. et autres) 、破棄院商事部、2013年1月29日、上告番号11-21011(Google c/ Solutions), 11-24713(Google c/ Cobrason)

アドワーズは Google社の有料広告サービスで、広告主は、自社の広告を載せることを希望する検索キーワードを複数選択する。広告主に選択されたキーワードをネットユーザーがGoogleの検索エンジンにかけると、検索結果の右側に「スポンサーリンク」の欄が現れ、そのキーワードを選択した広告主の広告が表示される。広告主は広告が表示される回数に応じてGoogleに支払を行う。

著名なブランドや競争相手企業の登録商標を非権利者が権利者に無断でアドワーズのキーワードに選択し、著名なブランドや競争相手企業と類似の商品(偽造品)やサービスを提供する広告を出していること、また偽造品や競争相手の商品、サービスが「スポンサーリンク」の欄に現れるため消費者に広告主の商品やサービスと商標権利者の商品やサービスとが関連商品であるという混同のおそれを生じることから、多くの商標の権利者がGoogleフランス社に対して、商標権侵害、不正競争、虚偽広告を理由に損害賠償と広告の停止を求めて訴訟を起こした。

フランス知的所有権法第L713-条と第L713-3条は、商標侵害が生じるには登録商標と同一または類似の標章が登録商標が指定している商品、サービスと同一または類似の商品、サービスについて用いられることを条件としている。しかしGoogle社がアドワーズによって行っている業務は広告代理業であり、 Google社自身が登録商標が指定している商品と同一または類似の商品やサービスの販売、提供をしているわけではない。広告主が他者の登録商標を無断でアドワーズの検索キーワードとして選択することを防ぐために必要な措置を取らず、消費者に対し登録商標が指定している商品と同一または類似の商品やサービスに関する広告を提示することを可能にしているGoogle社のアドワーズサービスは、商標侵害として考えられるか、が問題となった。

2005年から2007年にかけて提訴された案件においてフランスの下級裁判所はGoogle社の責任を認め、原告に対する損害賠償を命じる判決を下すが、裁判所により採られたGoogle社の損害賠償責任の法的根拠はGoogle社に対する商標権侵害の主張を退け、民法上の不法行為 (民法1382条) に基づく責任のみを認める判決 (パリ大審裁判所2005年12月8日判決Google c/ Kertel, 2007年2月13日, Google c/ Rencontres 2000)と、Google社に対する商標権侵害も不当競業も認める判決(ベルサイユ控訴院2005年3月10日判決Google c/ SA Viaticum、ナンテール大審裁判所2006年3月2日判決Google c/Hôtel Méridien、ベルサイユ控訴院2007年5月24日判決で確定、ベルサイユ控訴院2006年3月23日判決Google c/ CNRRH)、商標権侵害、不当競業に加えて虚偽広告も認める判決(パリ大審裁判所2005年2月4日判決Google c/ Louis Vuitton、パリ控訴院2006年6月28日判決で確定、パリ控訴院2008年2月1日判決Google c/Gifam)とに分かれ、統一していなかった。

2008年5 月20日、Google c/ SA Viaticum、Google c/ CNRRH、Google c/Louis Vuittonの3案件の上告を審査したフランス破棄院は欧州司法裁判所に対して、Google社のアドワーズのような検索サイトの有料広告サービスが商標権侵害にあたるか否か、また商標権侵害でなく民事責任のみが生じるのであればその条件は何かについて意見を出すよう (先行判決、question préjudicielle) 申請した。

この2点につき、2010年3月23日の判決で、欧州司法裁判所は以下のように先行判決を下した。

1) 商標権侵害について:検索サイトが登録商標をキーワードとして登録しそれを広告の目的に用いる行為は欧州指令89/104にいう「商業目的での使用」には該当せず、商標侵害を構成しない

2) 民事責任発生の条件について:検索サイトは保存する広告主の情報が登録商標の不正な使用にあたることを知っていたにもかかわらず、当該情報の掲示を続ける場合に民事責任を負う。検索サイトが単に受動的な情報の保存のみを行っており、保存する情報の内容をコントロールしていない場合には、欧州指令2000/31で定められているホスティングプロバイダーサービスの免責条項が適用され、民事責任は負わない。

破棄院は2010年7月13日、Google c/ GIFAM, Google c/Vuitton, Google c/ CNRRH, Google c/ SA Viaticumの4案件についてこの欧州司法裁判所の先行判決を適用した。

これらの案件は、GIFAM(全国家電製品製造者協会)、Louis Vuitton Malletier社、CNRRH社、SA Viaticum社が、登録商標をGoogleの検索エンジンにかけるとページの右側の「スポンサーリンク」の欄に商標の権利者と関係のない小売店や偽造品の販売サイト、または競争相手企業のサイトが表れるとして、Google France社と Google Inc社(以下Google社)を商標権侵害、虚偽広告、不正競争、不法行為責任で訴えていたものである。Google c/ GIFAMにおいてはGoogle社は全国家電製品製造者協会(GIFAM)による家電製品の小売店の広告の差止請求が、自由競争を阻み、独占禁止法に違反すると反訴請求を行った。これに対し破棄院は、2010年3月23日の欧州司法裁判所を引用して、まずGoogle社の広告サービスは欧州指令 89/104にいう商標の「商業目的での使用」にはあたらず商標権侵害はないとした上で、虚偽広告については、単に「スポンサーリンク」の欄に広告が現れ、消費者が広告主と商標の権利者がパートナー企業であると誤解する可能性があるけでは虚偽広告は成立しない、また民事責任に関してはGoogle社の民事責任が成立するためにはGoogleが単に受動的な情報の保存のみを行っているのではなく、保存する情報の内容をコントロールしていることを証明する必要があると判断した。

さらに Google c/ GIFAMにおいて破棄院は、独占禁止法を根拠とするGoogle社の反訴請求について、家電製品の製造企業の80パーセントの企業が加盟する全国家電製品製造者協会(GIFAM)の請求は、家電製品の小売店による電子商取引を完全に阻害するものであり、独占禁止法に違反するとして、控訴院の判決を破棄差戻する判決を下した。

2012年3月22日、リヨン控訴院は2010年3月25日の欧州司法裁判所の先行判決の理論を全面的に採用し、Google社を商標権侵害で有責と判示した2008年3月13日の第一審判決を取り消し、商標権侵害の請求を却下する判決を下した(Google France c. Jean-Baptiste D.V. et autres) : [判決を見る]