フランス不動産法の判例

外国人を顧客とする公証人の職業責任

(破棄院第1院, 2014年5月13日判決第13-13509, M.Y c/ SCP X…-A)

不動産売買契約書や夫婦財産契約書、債務証書などの公正証書を作成する公証人(notaire)は、顧客に対して適切な助言を行う専門家責任がある。フランス裁判所の判例では、この公証人の専門家責任は契約責任ではないため、公証人が顧客に対し適切な助言の義務を怠った場合には、民法1382条の不法行為責任として被害者は公証人の過失と自身が受けた損害、そして過失と損害との間の因果関係を証明しなければならないとされている(破棄院第1院、2007年9月19日判決)。

本件では2002年10月25日、フランス国内に複数の企業を所有するオランダ人の実業家Y氏が、そのうち一つのDeMatha社のためにBanque populaire du Sud-Ouest銀行から500.000ユーロの融資を受ける際に連帯保証人として公証人R氏が作成した金銭借用証書に署名をしたが、2005年3月De Matha社が破産の申立をし、Banque populaire du Sud-Ouest銀行が未払いの貸付金の返済を求めたために、フランス語で記載された金銭借用証書の内容を全部理解していなかったと主張して、証書署名の際に通訳をつけることを示唆しなかった公証人の責任を追及した。

2012年12月10日の判決でポー(Pau)控訴院は公証人R氏の責任を認め、Y氏が連帯保証人として銀行に対し支払義務を負っている額全額について賠償を命じた。公証人はY氏は実業家であり金銭借用証書の署名の際に通訳による補佐が必要であることを自覚していたにも関わらずあえて通訳をつけなかったのであるから過失を犯したのは同氏であると主張して上告したが、破棄院は、公証人は国から認可を受けた専門家として外国人の顧客が証書の内容を正しく理解していることを顧客の身分や能力とは関係なく常に確認する義務があり、本件で公証人R氏がY氏がフランス語をうまく話さないことを知っていたにもかかわらず通訳による補佐を助言しなかったことは過失を構成し、この公証人の過失はY氏の過失よりはるかに重大であると判事して不法行為による損害賠償支払責任に関する控訴院の判決を確定させた。

本判決はフランスで公証人に公正証書、特に不動産売買契約書の作成を依頼する外国人にとって非常に重要な判決で、契約書署名の際に通訳による補佐がなかったために契約の内容を正しく理解せず、例えば所有権持分の割合などで自分が全額購入費用を出資したのに子供や配偶者が50%の持分を有すると規定されていたなど損害を受けた外国人買主にとって、公証人の責任追及を容易にするものである。