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フランス会社法の判例

会社の取締役の民事責任が成立する要件-職務から切り離される過失の概念

(破棄院商事部、2010年5月9日判決、n°08-21547 Société EPF Partners c. Abela)

フランスでは会社の取締役(有限会社ではgérant ; 株式会社ではprésident du conseil d’administration、directeur général、administrateur、membre du directoire ; 簡素型株式会社ではprésidentなど)-が法律や規則、または定款の規定に違反したり会社の管理業務を行う上で過失を犯して会社や第三者に損害を与えた場合には、損害を受けた会社、会社の株主、または第三者に対して民事、刑事的な責任を負う(商法L223-22条、L225-251条、L227-8条)。

会社の取締役の民事責任は民法の不法行為の枠で追及される。会社の株主(associé)は、取締役の過失により会社が受けた損害の賠償を株主代表訴訟(action sociale)として会社に代わって請求することができるが、個別の株主が会社が受けた損害とは別に取締役の業務上の過失で損害を受けた場合には、自身の受けた損害、そして取締役の過失と損害の間の因果関係を証明して取締役の責任を追及することができる。

取締役が業務上の過失で第三者に損害を与えた場合に、損害を受けた第三者が会社に損害を賠償するのに十分な資産がなく取締役本人の責任を追及するためには、その取締役の業務上の過失が「職務から切り離される過失」(« faute détachable des fonctions »)であることを証明しなければならない。会社の第三者に損害を与えた取締役の業務上の過失が通常の職務遂行の範囲内である場合には、会社のみが損害賠償責任を負うからである。ここでの「職務から切り離される過失」とは破棄院の多くの判例によって「通常の任務遂行と相容れない、非常に重大で故意の過失」を指すと定義されている。例えば破棄院商事部の2003年5月20日の判例(n° 99-17092)では、有限会社SBTR社の社長X氏が会社の供給先であるSATI社に、既にBanque de la Réunion銀行に譲渡した別の会社に対する債権を譲渡する契約を結び、債務不履行後SATI社から受けた損害について個人的に責任を負うよう求められていた事件で、破棄院は、X氏は意図的にSBTR社の弁済能力を偽り、SATI社から商品の供給を受けたのであるから、このような故意の、通常の任務遂行と相容れない重大な過失を犯したX氏は自らSATI社に対し損害賠償を負う責任があると判示した。

一方、取締役が業務上の過失で個別の株主に損害を与えた場合には、損害を受けた株主は取締役の業務上の過失が「職務から切り離される過失」を証明する義務はない。この原則を確認したのが本判決である。

本件は株式会社Gaudriot社の株式に投資した株主が、会社の代表取締役及び取締役が会社が財政難にあることを隠し、虚偽の会計報告をしてGaudriot社の株に投資させたとして、会社が倒産に陥った後、元代表取締役及び取締役を相手取って個別に受けた損害の賠償を請求した事件であるが、破棄院は、株主の受けた損害は会社が取締役の過失から受けた損害とは別の損害であることをまず確認した上で、Gaudriot社の元代表取締役及び取締役が犯した過失、すなわちGaudriot社の虚偽の会計報告が職務から切り離される過失か否かには言及せず、Gaudriot社の元代表取締役及び取締役は株主が受けた損害を個人的に賠償する責任があると判示した。

従って、会社の取締役に対して個人的に蒙った損害の賠償を請求する株主は、その損害が会社が取締役の過失から受けた損害とは別の損害であることと自分が受けた損害と会社の取締役の過失の因果関係のみを証明すれば足りる。

株主や第三者が会社の取締役の責任を追及しようとする場合には時効が短いので注意が必要である。取締役の責任追及訴訟の時効は、取締役が過失を犯した時点、または取締役がその過失を隠蔽していた場合にはその過失が判明した時点より3年である(例外的に取締役の過失が15年以上の禁錮刑で処罰される重い犯罪を構成する場合には、この時効は10年となる)。