フランス契約法の判例 

継続的取引契約の解約– 予告期間なしの解約が認められる場合

(パリ控訴院, 第5部4院, 2015年9月2日判決 (CHRISTIAN LOUBOUTIN c. ROSENSTEIN CHAUSSEUR INC) 

商法第L 442-6, I条5項は「取引関係の期間に鑑み、商慣行に照らして産業間契約で定められた最低の予告期間を守らずに契約の解約を行う者は、その解約により損害を受けた者に対して賠償する責任を負う」と規定している。

同条はまた、「その取引関係が販売店の商標をつけた製品の給付に関するものであった場合には、契約の解約に必要な予告期間は倍に延長されるものとする」と規定している。ブランド商品の製造委託契約などがこれに相当し、製造の委託者は製造業者に契約の解約を予告する際には、かなり長期の予告期間を置く必要がある。

継続的な取引契約の解約申し入れを行うにあたって置いた予告期間が十分なものであるか否かの判断基準として、同L 442-6, I条5項は、(i) 取引関係の期間と(ii) 商慣行に照らして産業間契約で定められた期間という二つの基準を置いている。

二番目の「産業間契約で定められた期間」という基準に関しては、継続的取引契約の解約に必要な予告期間を定めた産業間契約は現在DIY産業、車産業、印刷産業の3つの部門でしか締結されていない。これらの産業部門で、現在継続的取引契約の解約が書面で産業間契約で規定された予告期間を遵守して行われる場合には、原則的に解約の予告期間は十分であったとみなされる。

それ以外の産業部門の場合、または産業間契約が存在する産業部門でも、産業間契約で規定された予告期間が十分でない特別の事情が存在する場合には、第一番目の取引関係の期間の基準、及び解約時における当事者間のその他の事情に照らして解約の申し入れを行うにあたって置いた予告期間が十分なものであるか否かが判断される(破棄院商事部2012年11月6日判決、上告番号11-24570 ; 2012年9月11日判決、上告番号11-14620)。

裁判所により考慮される「解約時における当事者間のその他の事情」は以下のようなものである:

  • 販売代理店契約において、販売代理店の売上高の大半がメーカーの商品の売り上げで占められ、販売代理店がメーカーに経済的に依存していたと見なされる場合(破棄院商事部2008年12月2日判決、上告番号 08-10.732 ; オルレアン控訴院2010年9月16日判決)
  • 独占的販売代理店契約の場合(ドゥエー控訴院2005年9月29日判決)
  • 解約される契約による取引額が高額であった場合 (破棄院商事部2004年7月7日判決、上告番号03-11.472) 
  • 取引関係中に設備投資や広告投資が行われた場合 (破棄院商事部2004年1月7日判決、上告番号 02-12.437)
  • 販売代理店が別の顧客や取引先となるメーカーを見つけるために必要な期間 (パリ控訴院2010年2月3日判決、オルレアン控訴院2011年3月31日判決) 、または事業転換する可能性の有無(ベルサイユ控訴院2004年12月2日判決)
  • 過去数か月に取引額が減少し、または過去数年間に取引関係に支障が生じており、解約が予見できるものであったか否か (パリ控訴院2010年5月19日判決、破棄院商事部2012年9月11日判決、上告番号11-14620)。

これらの基準に照らして、解約の申し入れを行うにあたって置いた予告期間が十分なものであると見なされる場合には、さらに、予告期間中それまでの契約条件で取引を行わなければならず、それまでの契約条件を守らない場合には過失として契約相手方に対する損害賠償責任の対象となる。
例えば予告期間中に商品の発注が大きく減少した場合には、予告期間を守らない解約に準じて損害賠償責任が発生する(破棄院商事部2014年12月16日判決、上告番号13-21.363、Ikea Supply c. Green Sofa Dunkerque ; 破棄院商事部2009年11月10日判決、上告番号08-18337 、Carrefour c. Legal Le Goût)。また一定の地域で独占的販売を定めた契約では、その独占性は予告期間中守られなければならず、予告期間中に他の販売店に製品を供給した場合には予告期間を守らなかったものとしてメーカーは販売店が受けた損害を賠償しなくてはならない(破棄院商事部2015年2月10日判決、上告番号13-26.414)。

しかしながら商法第L 442-6, I条5項はまた、「当事者の一方が契約義務に違反した場合」には、契約相手方は予告期間を置かずに継続的な取引契約の解約を行うことができると規定している。例えば販売代理店が契約金の支払を怠る場合などである。

本件では、高級靴のメーカー、CHRISTIAN LOUBOUTIN社が、その販売代理店ROSENSTEIN CHAUSSEUR INC社の度重なる代金支払遅滞を理由に契約の解約を19か月の期間を置いて予告したところ、ROSENSTEIN CHAUSSEUR INC社が予告期間中に配送された商品代金の支払を怠ったため、CHRISTIAN LOUBOUTIN社が予告期間の終了を待たずに取引を停止したものである。ROSENSTEIN CHAUSSEUR INC社は商法第L 442-6, I条5項を根拠にCHRISTIAN LOUBOUTIN社に対して訴訟を提起し、予告期間を守らない解約により受けた損害の賠償を請求した。

第一審のパリ商事裁判所は2013年2月21日の判決で、CHRISTIAN LOUBOUTIN社はROSENSTEIN CHAUSSEUR INC社が商品代金の支払を怠ったことを理由に予告期間を置かずに取引関係を停止し発注された商品の配送を行わない権利があると判示し、ROSENSTEIN CHAUSSEUR INC社にCHRISTIAN LOUBOUTIN社に対して19 394,02ユーロの損害賠償と10 000ユーロの弁護士費用の支払を命じた。

この判決に対しROSENSTEIN CHAUSSEUR INC社は控訴を行ったが、パリ控訴院は2015年9月2日の判決で、予告期間中の取引関係の停止はROSENSTEIN CHAUSSEUR INC社が契約の本質的な義務である支払義務を怠ったことにあるとして第一審判決を確定し、ROSENSTEIN CHAUSSEUR INC社にCHRISTIAN LOUBOUTIN社に対して9.394,02ユーロの損害賠償と10 000ユーロの弁護士費用の支払を命じた。