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使用者の過失を理由とする労働者の辞職が不当解雇とされる場合

(リモージュ控訴院、2010年1月18日判決、SARL MJ Chaussures c/ Laurence. C.)

フランス労働法の規定上、辞職は解雇と違い特別の手続を必要とせず、口頭での辞職も可能である。

一方、労働者による辞職が有効と見なされるためには、労働者が辞職の意思を明確に表明したことが必要である。例えば労働者が理由なく会社を欠席する場合、それだけでは辞職の意思を表明したとは見なされず、使用者は、労働者の辞職の意思を証明するためには、労働者に警告状を送り、それに返事がない場合にはじめて解雇の手続きを取ることができる。このステップを踏まないで解雇をすると、不当解雇が成立する。

労働者が、使用者が雇用契約上定められている義務に反したなど使用者の過失を理由として辞職する場合には、その辞職は裁判所により、まず契約破棄(prise d’acte)として扱われ、その後裁判所により当事者の事実関係の要素が検討された結果、使用者に過失があったと認められる場合には、労働者の辞職は使用者による不当解雇として扱われ、使用者に対して労働者への損害賠償金の支払が命じられる。この場合辞職のもととなったとされる使用者の過失の立証義務は労働者にあり、裁判所は労働者と使用者それぞれが提出する証拠に鑑みて不当解雇となる契約破棄か、単なる辞職かを判断する。

フランス法では不当解雇賠償金の額は、労働者に2年以上の勤務年数があり、従業員が11人以上の企業では、最低6か月分の給与額に相当する額と定められており(労働法第L 1235-3条)、労働者がそれ以上の損害を受けたことを証明して認められることも多い。

不当解雇が裁判所により認められた場合、使用者は労働者に対してこの不当解雇賠償金に加え、解雇補償金、予告期間補償手当、有給休暇補償手当といったさまざまな補償金を支払う義務があり、また精神的損害を労働者が主張していた場合にはその損害賠償金も支払わなければならない。

本件では、SARL MJ社の店長がユダヤ人の女性店員に対し人種差別的な侮辱を他の店員の前で行ったところ、その女性店員が辞職通知を出し、翌日から出勤しなかったところ、店長が辞職の前の予告期間を守らなかったとして辞職した女性店員に受けた損害の賠償を求めて訴訟を起こし、被告となった女性店員が店長の誹謗を理由とする辞職は不当解雇に相当するとして逆に損害賠償を求める反訴請求を行った。

リモージュ労働審判所は辞職した販売員の請求を受け入れ、使用者に元販売員に対する様々な損害賠償の支払を命じたため使用者は控訴院に控訴したが、リモージュ控訴院は2009年6月22日の判決で、SARL MJ社の店長が元販売員に対し同僚の前で人種差別的な誹謗を行ったことは同販売員が雇用契約を継続することを困難としたものであるとして、労働者の辞職を使用者の過失による不当解雇に切り替え、SARL MJ社に対し、不当解雇賠償金として18 000ユーロ、解雇補償金として2 030ユーロ、精神的損害賠償金として1 500ユーロ、予告期間補償手当として2 030ユーロ、予告期間の有給休暇補償手当として203ユーロ、及び闇労働の事実があったとして、労働法第L 8223-1、L 8221-5条の適用により6 090ユーロの支払が命じられた。

 

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