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破産手続の注意期間における債務弁済の有効性

(破棄院商事部、2010年3月16日判決、n°09-11430, Société Everest c/ Ph. Serrano, ès qual.)

フランス法で定めている企業の更正、破産手続(procédure collective)には、会社更生手続(sauvegarde)、再建型破産手続(redressement judiciaire)、清算型破産手続 (liquidation judiciaire)がある。

会社が支払停止(cessation des paiements)の状態になっていない場合には会社更生手続が、会社が支払停止の状態にあり、更正の可能性がある場合には、再建型破産手続が、更正が不可能な場合には、清算型破産手続 が取られる。いずれの場合も会社の代表者、または会社が支払停止の状態にある場合には債権者や検察官の申請により、裁判所が手続開始を命じ、更正、破産手続のための手続判事(juge-commissaire)、及び会社更生手続、更正のための破産手続においては管財人(administrateur judiciaire)と債権者代表たる法定受任者(mandataire judiciaire)、清算のための破産手続においては清算のための管財人(liquidateur)を任命する。

手続開始命令は官報に公示され、会社の商業登記簿謄本に記載される。更正、破産手続開始命令が下されると、6ヶ月間の監視期間(période d’observation)が定められ、この監視期間の間、手続開始命令以前に生じた債務の弁済は相殺による弁済を除き禁止され(商法第L 622-7条第1項)、この禁止に反して債務者である会社が手続開始命令以前に生じた債務を弁済した場合、債務契約の締結日又は弁済日から3年以内に、全ての関係者又は検察官が弁済の無効を裁判所に訴えることができる(同条第3項)。

再建型破産手続、清算型破産手続においては、裁判所は正確な支払停止日を決定し(商法第L631-8条)、支払停止日と破産手続開始命令の間の期間は注意期間(période suspecte)と呼ばれる。この注意期間に債務者である会社が債務の返済を債権者に対して行った場合、債務の期限が到来していなかった場合、または期限が到来していたが、弁済が現金や小切手、手形など通常の支払方法でなされなかった場合は当該弁済は当然無効となり(商法第L 632-1条)、また債権者が会社が支払停止にあると知っていた場合には裁判所が無効とすることができる(商法第L 632-2条)。注意期間の弁済の無効の申立は管財人、法定受任者、更正計画実施の受任者又は検察官が行うことができる(商法第L 632-4条)。

本件においては、Sportec社は、その供給先であるEverset社に対して582 795ユーロの未払債務を返済するために、2002年2月28日に顧客債権、2002年3月29日に在庫商品、2002年4月22日に設備資産を譲渡したところ、2002年に倒産し、同年5月に清算のための破産手続 が開始、裁判所により支払停止日が2002年1月1日に設定された。裁判所により任命された清算管財人は、Sportec社がEverset社に対して行った3つの譲渡の無効を、注意期間における債務の弁済として、裁判所に訴えた。

グルノーブルの控訴院は譲渡を無効とする判決を下したため、Everset社は、同社のSportec社に対する債権の未払債権は届出により破産債権として確定しており、破産手続以前に既に弁済された債権を無効とすることはできないと主張して上告を行った。しかし破棄院商事部は、注意期間にSportec社が行った顧客債権、在庫商品、設備資産の譲渡は通常行われている支払方法とはいえず、また当該弁済が手続判事に承認されなかったことを挙げ、商法第L 632-1条を適用してEverset社の未払債権の破産債権としての確定は注意期間にSportec社が行った弁済の無効を妨げないと判決を下した。

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