Animal Welfare – Interview with Caroline Lanty

動物愛護法―カロリーヌ・ランティ弁護士インタビュー

フランス人のペット保有率は日本よりもずっと多い。歴代のフランス大統領の多くが犬の飼主である1ほか、統計によると平均してフランス2世帯に1世帯で犬か猫が最低一匹飼われている2

日本と違い、マンションの賃貸契約や管理規約でペットの保有を禁止することはできず、法律でペット保有の権利が認められており3、誰でも、どこに住んでいてもペットを飼うことができることも一つの理由である。

一方ペットを飼う権利が全ての人に認められていることから、子供のおもちゃとして犬猫を飼い、数年して手間費用がかかるという理由でペットを捨てる飼主も多い。

こうした状況の中、フランスでは数多くの動物愛護団体がフランス中に保護施設を有し、施設で引き取られた動物たちの里親探し活動を積極的に行っている。

またこうした動物愛護団体のいくつかは、日本円にして数億円から数十億円規模の年間予算を有し、犬猫の密輸や虐待の犯人に対する告訴手続や、動物愛護法の制定を国会議員に呼びかけるロビー活動も専門家を交えて行っている。

この数年フランスでは、数多くの動物愛護団体による啓発活動、特にインターネット上のビデオ映像による畜産動物の虐待現場の告発により、動物愛護の問題は国民の大きな関心を呼び、2022年の大統領選ではほぼ全ての候補者が動物愛護に関する政策を打ち出している。

動物愛護の分野での現在のフランスの状況と法律の規定についてより知るため、もとSPA(エス・ペー・アー、動物保護協会)4の会長で、パリ弁護士会弁護士のカロリーヌ・ランティ(Caroline Lanty) 弁護士に話を聞いた。

Caroline Lanty

カロリーヌ・ランティ(Caroline Lanty) (弁護士, 元SPA会長)

2005年パリ弁護士会登録、翌年2006年に26歳の若さ(史上初)でSPAの会長職に選ばれる。 2006年から2008年、そして2009年の会長としてフランス中に60あるSPAの保護施設を訪問して新しい保護施設の建設計画を監督し、SPAの専門家と共に密輸された犬猫の救出作業に立ち会い、国会議員や大統領に対して動物愛護の啓発活動を行った。

2008年から畜産動物の保護団体であるL 2145の弁護士として、畜産動物保護法の規定に違反した屠畜場と畜産農家に対する告訴をフランス中で手がけている。2児の母。

永澤亜季子 : 動物保護の必要性について意識を持つようになったきっかけは何ですか。

カロリーヌ・ランティ : 動物保護の必要性について意識を持つようになったというよりも、子供の頃、世の中に苦しんでいる動物たちが沢山いることを知って大きなショックを受け、動物たちを苦しみから救うために何かしなければならないという強い気持ちに駆られてきました。

私が育ったのは普通の家庭で、親は動物愛護派でも菜食主義者でもありませんでした。祖母は田舎で犬を何匹も飼っていて、とても可愛がっていましたが、洋服ダンスには毛皮のコートが沢山ありました。8歳か9歳の頃、祖母が狐の足がついた襟巻をつけているのを見て毛皮というものが動物を殺して作られたものということを知り、祖母がいない時に洋服ダンスの毛皮のコートにチューインガムを沢山貼り付けて着れないようにしたことがあります。もちろん親から怒られましたが、祖母は私の「犯行の動機」を理解して、毛皮を着るのをやめてくれました。

永澤 : フランスにおけるペットの法的地位とペットを保護するフランスの法律について教えて下さい。

ランティ : フランスでは19世紀のナポレオン法典以降、動物は単なる「物」として扱われてきましたが、2015年に動物の法的地位を「物」以上にするための法律が制定され、民法典に動物は「感情のある生き物」であるという規定が設けられました6

ペットの飼主の義務を規定するのは農事法典で、L214-1条とL214-2条で、全ての者はそれぞれの動物が必要とする生活環境を与える条件で動物を飼う権利があることが確認され、L214-3条で飼っている動物に対する不当な扱い、虐待行為が禁止されています7

動物に対する虐待行為の処罰は刑法典と農事法典で規定されており、2021年11月30日の法律で強化されました。動物に対する虐待行為はこれまで最高2年の禁錮刑と30 000ユーロの罰金で処罰されていましたが、現在は3年の禁錮刑と45 000ユーロの罰金で処罰されています8

動物の遺棄も虐待行為と同じ刑罰で処罰され、動物の虐待行為や遺棄を行ったものがその動物の飼主であった場合には刑罰が4年の禁錮刑と60 000ユーロの罰金に、動物の死亡をもたらした場合には5年の禁錮刑と75 000ユーロの罰金に重くなります。

飼い主が告訴されて有罪となる場合、また飼い主が見つからない場合には、裁判所は虐待された、または遺棄された動物を誰が引き取るかを決定します。裁判所は動物を飼い主から没収して動物愛護団体に引き渡すことを命じる判決を下すことができます。そうした判決をもとに、SPAを始めとする動物愛護団体は動物を引きとって保護施設で飼育し、里親を探すことができることになります。

ペットの売買は法律で規制されており(農事法L214-8条)、犬や猫を売るブリーダーやペットショップだけでなく、無料で譲る個人も、売るまたは譲る犬猫に必ず識別番号の入ったマイクロチップを装着させるか、獣医のもとで耳の内側にタトゥーによる個体識別番号を入れさせる義務があります(農事法第L212-10条)。ペットの個体識別番号は飼い主の名前と連絡先と共に、農業省の指定登録機関であるI-Cad (Identification des carnivores domestiques)に送られ、管理されます。

フランスではペットショップで子供のプレゼントとして買われた犬と猫が遺棄されることがとても多いため、2021年11月30日の法律はペットショップにおける犬猫の売買を202411日から禁止しました。2024年以降、フランス内のペットショップでは動物愛護団体の施設で保護されている犬猫の譲渡のみができるようになります(農事法L 214-6-3条)。

飼い主の責任意識を高めてペットの遺棄を防止するために、2021年11月30日の法律ではまた、ペットの飼主となる者が、動物を飼う際に果たさなければならない義務を列挙した「誓約と知識の証明書」に署名し、7日の熟慮期間を置いてからペットを飼うまたは譲り受けることが義務づけられています。

永澤 : フランスにおけるペットの違法取引の問題について教えて下さい。

ランティ : ヨーロッパにおいて、ペットの違法取引は、麻薬と武器の違法取引に続いて3番目に経済規模の大きな違法取引です。ポーランドやスロベニア、ブルガリアなどの東欧諸国から、数多くの犬猫がフランスに違法に輸入されています。

犬の狂犬病予防ワクチンは生まれたばかりの子犬には効果がないため、フランスでは子犬が生後3か月を過ぎてから接種させ、接種後21日を置いてから取引されなければならないことになっていますが、犬の違法取引をする東欧のブリーダーは現地の獣医と共謀してまだ生後3か月になっていない子犬を生後3か月経った子犬としてパスポートを作り、何十匹、時には100匹以上の子犬をトラックに詰めてフランスまで運ばせます。

フランスの違法取引ブリーダーやペットショップは一部の獣医と共謀して、東欧から酷い衛生環境で運ばれた、狂犬病予防ワクチンを正しく受けていない子犬たちに、フランスの識別番号の入ったマイクロチップを装着させ、フランスで生まれた血統書付きの犬だと偽って原価の何倍もの価格でフランスの消費者に販売します。

ほとんどの場合共犯獣医が発行したフランスの健康診断証明書がブリーダーやペットショップからペットの買主に渡されるため、買主は、自分がフランスのブリーダーやペットショップで買った子犬が東欧から違法に輸入されたとは知る由がありません。

こうして違法にフランスに輸入された子犬たちは、トラックに積み込まれて遠距離運搬されている途中で病気に感染し、生後数か月で発病して死亡する例も多く、買ったばかりの愛犬をなくした飼い主がブリーダーやペットショップを告訴したり、SPAなどの動物保護団体に通報することで、問題ブリーダーやペットショップの取り調べが始まることになります。

永澤 : ペットの違法取引防止のために、SPAはどのような活動をしていますか。

ランティ : SPAの違法取引防止部 (Cellule Anti-Trafic, CAT)9は、ペットの取引に関する法律に違反している疑いのあるペットショップやブリーダーに対して専門家による取り調べを行い、動物に対する不当な扱い、密輸入、闇労働、資金洗浄など刑法上の犯罪が成立する事実が判明した後、告訴を行います。

SPAの違法取引防止部が取り調べを行った後、警察や国家憲兵隊といった国の捜査機関がペットショップやブリーダーの取り調べを続ける場合には、SPAは捜査当局と協力して、ペットショップやブリーダーが所持している犬猫を差押え、没収します10

SPAのペットショップやブリーダーに対する告訴が検察官により受理されるためには、刑法上の犯罪を証明する必要がありますが、「動物の違法取引」は刑法典で犯罪として定められていません。そのため、SPAが被害者として私訴原告人となることができる動物虐待罪11に加えて、盗難罪、隠匿罪、書類偽造罪、脱税、詐欺罪、関税法違反などの犯罪を根拠として告訴を行います。このように動物の違法取引を行っている者が、単なる動物愛護法の違反だけでなく、密輸と闇労働で大きな収益を挙げていることを明らかにすることで、国の捜査機関が犯罪の捜査と犯人の取り調べに着手するよう促すようにしており、このSPAの訴訟戦略は多くの成果を挙げてきています。

永澤 : 動物虐待防止の分野ではSPAはどのような活動をしていますか。

ランティ : SPAは動物虐待行為が判明する際にその犯人に対して告訴を行うことができますが、動物虐待行為の証明は容易ではありません。多くの場合、動物虐待を行っている疑いのある飼い主に事情徴収をしても事実の証明は得られず、SPAは警察でないので、動物虐待を行っている疑いのある飼い主の家宅を強制的に捜索してペットを救出することができません。動物虐待行為の証拠が揃った後で告訴をし、訴訟手続の中でペットを引き取り、保護することになります。

SPAの捜査部 (Pôle Investigations) は一般市民から動物虐待に関する通報を受け、日々調査と取り調べを行っています12。動物虐待行為が判明する場合には、動物虐待を行っている飼い主に対して告訴を行い、虐待行為を受けているペットを没収保全する措置を予審判事に請求します。

南仏エクサンプロヴァンスにあるSPAの保護施設。犬が放し飼いで保護されている。(写真提供:office de tourisme d’Aix-en-Provence)

永澤 : SPAはサーカスの動物を没収保護することはできますか。 サーカスの動物に関するフランスの法律を教えて下さい。

ランティ : 動物虐待が明らかになればできます。2007年私がSPA の会長だった当時、酷い生活環境で管轄当局の許可なしにサーカスで所持されていたライオンとヒヒの没収に立ち会いました。フランスでは多くの動物保護団体が、サーカスから引退した動物を引き取り、田舎の保護施設で世話をしています。

サーカスでの野生動物の使用はヨーロッパの多くの国が廃止していますが、フランスは他国に遅れて13去年、サーカスでの野生動物の利用を禁止する法律が制定されました14。この禁止は多くの動物保護団体の長年のロビー活動とフランス内のいくつかの都市によるイニシアチブの成果です15

サーカスでの野生動物の利用禁止には段階的な禁止措置が設けられ、2023年までにサーカスにおける利用目的での野生動物の購入と繁殖が禁止、2028年までにサーカスにおける野生動物の保持と利用が禁止となります。

フランスのサーカスで保持されている野生動物は700から1000匹いますが、禁止が全面化した後、こうしたサーカスから引き取られた動物をどこで保護管理するかが将来に向けての大きな課題となっています。フランスにある野生動物の保護施設、例えばrefuge de l’Arche16やparc Tonga terre d’accueil17ではこれらの動物を全て引き取ることはできないため、現在Fondation Brigitte BardotやOne Voice、30 millions d’Amisを始めとする複数の動物愛護団体が、環境省と協力して検討委員会を設立し、施策を検討しています。2021年11月の法律制定後、自発的にライオンを野生動物の保護施設に引き渡すサーカスもありますが、新しい保護施設の建設が不可避です。

永澤 : フランスの集約畜産で動物虐待が問題になっているのはなぜですか。

ランティ : 集約畜産されているのは主にブタ、鶏とウサギで、フランスの食品市場に出回るウサギはほぼ全て、豚は9割以上、鶏は8割以上、集約畜産で飼育されたものです18

フランスの田舎は放牧された牛たちのイメージがありますが、フランスの農家の実態は全く違い、ほとんどの家畜は太陽の光の入らない、閉ざされた建物やケージの中に詰みこまれて一生を過ごします。

生まれてすぐの子豚は母親から引き離され、尾と歯を切られます19。またオスのブタは食肉に匂いがあるという理由で、子豚のうちに去勢されていました。いずれも資格のある獣医ではない、農家の人間が、麻酔を使わずに行うものです。子豚の麻酔をかけない去勢は2022年1月1日から禁止され、麻酔の使用が義務づけられていますが、尾と歯の切断には麻酔の使用は義務づけられていません。

鶏は成長を加速するように遺伝子選択されますが20、足の成長が体の成長に追い付かないため歩けなくなったり、奇形になる鶏が沢山います。

ブタや鶏の畜産では一匹当たりの最低面積が法律で定められていますが21、極度に密集した環境なので、動物たちは生きていくための基礎的な欲求を満たすことができません。

ウサギの畜産では最低面積すら法律で定められておらず、床から天井まで積まれた小さなケージの中に詰め込まれて一生を過ごします。

集約畜産では高密度の場所に閉じ込められ、免疫力の低くなった家畜の間で病気が蔓延するのを防ぐために、大量の抗生物質が飼料や水に混ぜられます。そのため家畜の薬剤耐性レベルが上昇して食肉に薬剤耐性菌が混入し、それを食べる人間に感染します22

集約畜産はまた大量な家畜の排せつ物による物温室効果ガスの発生や土壌や河川の酸性化といった環境破壊をもたらします。また家畜の飼料には南米、特にブラジルから輸入された遺伝子組み換え大豆が使われますが、家畜飼料用の大豆生産の拡大のせいで熱帯雨林が大規模に破壊されています23

フランスの街角でフォアグラ生産における強制給餌に反対を呼びかけるL214のボランティア

永澤 : L 214 が屠畜場を告発する際の法的根拠を教えて下さい。

ランティ : 畜産動物の殺処分の方法は法律で規制されており、屠畜場は殺処分前に、殺処分される動物が痛みを感じないよう動物を無感覚にするための気絶処置を施す義務があり(農事法第R214-70条)24、動物の種類により気絶処置の方法と器具が細かく定められています。

しかし多くの屠畜場において気絶処置が正しく行われず、気絶をきちんとしていない動物に対して再度気絶処置を施すということが行われないため、数分後に意識が戻り、感覚がある状態で殺処分される動物が沢山います。この状況は動物虐待罪を構成するため、L214は屠畜場とその責任者、及び動物虐待行為を行った屠畜場の職員の処罰を求める告訴を検察官に対して行い、また重大な虐待行為があるケースでは、並行して県知事と農業大臣に屠畜場の閉鎖を請求します。

屠畜場を告訴する告訴状は、検察官が必ずしも詳しく知らない動物愛護法の違反を詳しく説明して犯罪行為を立証するため、ページ数がかなり多くなるのが通常です。検察官は告訴を認めると国家憲兵隊や警察、そして農畜産捜査部(brigarde nationale d’enquêtes vétérinaires)などの国の機関に捜査を命じます。

ガール県にあるアレス市の屠畜場の裁判の法廷。L214が公表したビデオはフランスの全国新聞で大きく報道され、屠畜場は経済困難に追い込まれた。(写真提供:Midi Libre)

永澤 : 20211130日法の他に、動物保護団体が最近勝ち得た成果はありますか。

ランティ : 2022年から養鶏業におけるオスのヒヨコの粉砕処分が禁止されました。

オスの鶏は卵を産まず、また鶏肉として飼育するにも適さないという理由から養鶏業で不要と考えられており、オスのヒヨコは孵化場で生まれてすぐに、生きたまま高速粉砕機にかけられたり、ガスで窒息させられたりして、殺されます。フランスでは毎年約5000万羽ものオスのヒヨコが殺処分されてきました。

私達が食べる卵の生産に隠された、オスのヒヨコの大量粉砕処分という実情は、2014年にL214がインターネット上で公開したブルターニュ地方の養鶏孵化場の職員が録画したビデオ25により一般市民に知られるようになり、消費者がヒヨコの粉砕処分禁止を政府に強く求めるようになりました。

2021年、緑の党の議員が国会に提出した畜産業における動物保護に関する法案が上院で否決されましたが、政府はヒヨコの殺処分を禁止する政令を制定し、2022年2月に公布されました。政令では、養鶏孵化場は遅くとも202231日までに有精卵の雌雄を見分ける機械を発注し、202261日までに機械を設置する工事を始めたことを証明しなければならないこと、ヒヨコの殺処分禁止の規定に違反した者は最高1500ユーロの罰金刑に処されることが規定されています(農事法第R215-4条)。

レフェランス

カロリーヌ・ランティ著「恥ずべきアニマルビジネス」Editions du Rocher (2009年5月15日) – 著作権料は全額動物愛護団体に寄付されている。

Twitter: twitter.com/carolinelanty

補注