不動産法・建築法務
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フランスの不動産市場が一番動きが大きいのは春、特に3月から4月となっています。逆に10月を過ぎると不動産市場の動きが少なくなり、売価も下がる傾向があります。
仮契約書に署名してから本契約書に署名するまでの期間は通常3か月です。仮契約書には不動産業者が準備するもの(compromis de vente)と、公証人が準備するもの(promesse de vente)の二つのタイプがあります。
買主が銀行融資を受けずに購入する資金がある場合には、この期間は2か月になりえますが、フランスでは公証人が本契約書に先立って売主の所有権、同じ物件の過去の売買、物件が所在する地域に関する都市計画や法律で定められた技術的審査の確認をするため、売主と買主が公証人のもとで本契約書に署名するまでに一定の期間がかかります。
仮契約署名時に買主が支払う「予約補償金」(indemnité d’immobilisation)は、本契約締結までの予約期間の間、売主が他の者に物件を売ることができないことを補償する補償金です。
「予約補償金」の額は法律で規定がありませんが、通常購入代金の10%となっています。
購入を予約する意思を確認した買主が最終的に購入を取りやめる場合には、売主の責による事由でない限り、「予約補償金」は売主に支払われます。
フランスでの不動産売買で« frais de notaire »といわれる費用は、公証人の報酬だけでなく、不動産売買にかかる地方税、国税を含みます。
フランス住居情報局(Anil)のホームページで、不動産売買の« frais de notaire »のシミュレーションができます。
例えばパリで2 000 000 ユーロのアパートを買う場合の« frais de notaire »は139 145ユーロで、内訳は以下の通りです:
– 公証人報酬(消費税込み): 19 652 ユーロ
– 各種税金: 116 133 ユーロ
– 手続料と経費: 1 360 ユーロ
– 登記所税: 2 000 ユーロ
これらの費用は全て買主が負担することになっています(フランス民法1593 条)。
フランス破棄院(最高裁)の判例によると、不動産売買時に買主が支払った公証人費用はそれ自体無効取り消しで賠償される損害には当たらないとされています。そのため、公証人費用を取り戻すためには、売買が無効になったことが公証人の過失であることを別途立証する必要があります。
フランス民法1583条では、売買契約は売主と買主が契約の対象となる者と売価に合意した時点で成立するとされています。従って提案価格でオファーがあった場合、売主はオファーを出した買主に物件を売る義務が生じ、オファーを断ると買主は裁判で売買契約の強制執行と損害賠償の支払いを請求することができます。
フランスで”VEFA” (“Vente en l’état futur d’achèvement”の略) という不動産売買は、これから建築されるまたは建築中の集合住宅にある物件(日本でいう新築分譲マンション、英語圏のオフプラン物件)の売買契約を指し、不動産開発プロジェクトのデベロッパーが売主となります。
建設途中の不動産開発プロジェクトで、デベロッパーが売主となる不動産取引では、買主は物件に関する情報を図面や建築仕様書等の書面から得て購入を決めるため、買主を保護するための多くの規則が建築住居法で詳しく定められています。
例えば売価の支払は建築工事の進行度に応じて支払額の上限が以下のように定められています:
– 土台工事終了時:売価の35% まで
– 屋根工事終了時:売価の70% まで
– 建築工事終了時:売価の95%まで
– 残りの5% :物件の引渡し時
フランスで居住目的マンションのデベロッパーは、建築工事の完工を保証する保険と、工事が完工せずに売買契約が取り消される場合に買主が支払った代金の返還を保証する保険に加入する義務があります(建築住居法L261-10-1条)。デベロッパーがこれらの保険に加入していることを証明する書類はVEFAの予約契約(contrat de réservation)に添付されます。
VEFA 売買契約において、売主であるデベロッパーは、買主に対して予約金の支払いを請求でき、その額はVEFA 予約契約に記載されます。
予約金の額は法律で以下のように定められています:
– 本契約が1年以内に署名される場合には売価の5%
– 本契約が1年から2年の間に署名される場合には売価の2%
本契約の署名が2年以上後になる場合には、デベロッパーは買主に対して予約金の支払いを請求することはできません。
居住物件のVEFAで売主であるデベロッパーが義務的に加入しなければならない建築工事の完工を保証する保険は、被保険者であるデベロッパーが倒産した場合に保険者である銀行または保険会社が建築工事を最後まで進める義務を負っています。従って買主は銀行または保険会社に対して裁判で建築工事の遂行と物件の引渡しを請求することができます。
フランス最高裁である破棄院の判例ではまた、建築工事が終わる前にデベロッパーが倒産してしまった場合、VEFAの買主は銀行と結んだ住宅ローンの支払停止を裁判所に対して請求できるとされています。
商事賃貸借契約の期間は9年で、それより短い期間で契約することはできません。借主だけ3年ごとに契約を解除する権利があり、フランスで商事賃貸借契約は”Bail 3-6-9″と通称されています。
商事賃貸借の期限満了(9年目)を待って、借主に「更新拒否付きの解除通知」(« congé avec refus de renouvellement »)を通達する必要があります。解除通知の通達は最低6か月の予告期間を置くことが必要です。
9年を契約期間とする商事賃貸借契約が期限満了後暗黙の了解により継続されていた場合には、この6か月の予告期間は各四半期の最終日(3月31日、6月30日、9月30日、12月31日) から起算する必要があります。
家主が商事賃貸借で貸している物件の一部を居住物件として使用する場合には、商事賃貸借の3年目、または6年目に解除することが認められています(フランス商法L145-23-1条)。
いずれの場合も、解除通知に記載された解除理由は明確でなければならず、また家主は借主に代わりの同等の物件を提供しない限り、立ち退く借主に対してindemnité d’évictionと呼ばれる立退補償金を原則的に支払う義務があります。
商事賃貸借契約における立退補償金は、借主である商人が物件を立ち退かなければいけないことで受ける損害を賠償するための補償金です。
借主が物件を立ち退くことで、そこで築き上げた営業資産(fonds de commerce、顧客や内装設備)を完全に失う場合には、その営業資産の価値に応じて立退き補償金の額が定められます。
一方借主が営業資産を完全には失わない場合(例えば名前の知れたブランドの店舗で店舗の場所を変えても顧客が減らないような場合)には、立退補償金の額は賃借権(droit au bail)の価値と店舗の移転費用に定められます。
家主は自分が妥当と思う立退き補償金の額を解除通知の中に記載することができます。この場合、家主と借主との間で、必要に応じて鑑定手続を行い、立退補償金の額の交渉を行います。
家主と借主との間で立退補償金の額について合意に達しない場合には、家主または借主は裁判所に立退き補償金の額を決める司法鑑定を請求することができます。
裁判所が任命した鑑定人が評価した立退補償金の額が高すぎると家主が考える場合には、解除通知を取り消して借主に契約の更新を提案することができます(家主の「考え直す権利」« droit de repentir »)。家主は解除通知を取り消す決定は裁判所の判決が確定してから15日以内に行う必要があります(フランス商法L 145-58条)。
解除通知は必ず執行官により通達する必要があり(商法L145-9条)、書留郵便でされた解除通知は無効となります。
解除通知が正しく通達されなかった場合、借主は以下2つのオプションがあります:
– 解除通知の無効を主張して、家主に対して賃貸借契約の継続を請求する訴訟を提起する、または
– 解除通知の無効は請求せずに、家主に対して立退き補償金の支払いを請求する。
原則的に、商業物件の更新家賃はフランスの統計局(INSEE)が定める物価上昇率を適用した額である必要があります(フランス商法L 145-34条)。物件の価値が著しく上昇した場合や、または契約期間が9年の商事賃貸借契約が12年以上暗黙の合意で継続された場合には、更新時の家賃は物件の「賃貸価値」(valeur locative)に応じた額に値上げされることができます(フランス商法L145-33)。この「賃貸価値」は周辺地区の類似した物件に適用されている家賃の額を比べて定められます。
しかしフランス破棄院の判例では、これらの商業物件の更新家賃に関する商法の条項は強行法規(*=当事者間が契約で適用を排除することができない重要な法律の規定)ではないとされています(破棄院第3院、2004年3月10日判決、上告番号n°02-14998)。
従って商事賃貸借契約の契約書に、これらの条項の適用を排除して別の方法で更新家賃を定める旨の特別条項が定められていた場合には、その方法が適用されます(例えば契約書に更新家賃が「市場の賃貸価値」valeur locative « du marché »で定められるという内容の条項が定められていた場合には、単なる周辺地区の類似した物件に適用されている家賃の額ではなく、不動産市場で現在物件を新しく貸す場合に設定することができる家賃の額がレファレンスとなります)。
従って、まず契約書の条項を細かく確認し、鑑定人に更新家賃の査定を依頼し、家主が提案している更新家賃が鑑定人が査定した家賃の額を大きく上回る場合には家主と家賃の額について交渉を行うのが妥当です。
家主と借主の間で更新家賃の額について合意に至らない場合には、借主は物件がある場所の地方裁判所の裁判長のもとで、更新家賃を定めるための訴訟手続を提起することができます。この手続きは特殊で、訴状の通達の前に弁護士が作成する意見書が裁判長に提出されます。
更新家賃を定めるための訴訟手続期間中は更新前に適用されていた家賃が適用され、裁判所の判決が出た後で、更新時に遡って裁判所が定めた新しい家賃が適用されることになります。従って判決後に家主はそれまで払った家賃の合計額と、新しい家賃が更新日から適用されていたならば払っていた家賃の合計額との差額を、家主に支払うことになります。2014年6月18日の法律(通称「Pinel法」)では更新後の新家賃による家賃の増額の限度を一年ごとに10%と規定しています(商法L145-38条)が、賃貸借契約にこの規定の適用を排除する条項が含まれていた場合にはこの限度額は適用されません。
物件の市場価値とはその物件が不動産市場で売れる価格を指します。
フランスの不動産鑑定レフェランスである「不動産鑑定規則」(La Charte de l’Expertise en Évaluation Immobilière)は、市場価値を「当該物件が査定日に均衡の取れた不動産市場で取引される価格」と定義しています。
不動産鑑定士による価値査定を得ることで、買主は買おうとする物件の真の価値と、不動産売り出し広告に掲載されている提案価格の妥当性を知ることができ、購入オファーを出すか否かを決めることができます。
もちろん出せます。その場合売主は以下のオプションがあります:
– 買主候補者の購入オファーを拒否する
– 買主候補者の購入オファーを受諾する
– 買主候補者の購入オファーを拒否してカウンタープロポーザルを出す、この場合買主候補者は売主のカウンタープロポーザルをそのまま受諾する代わりに、売主と価格の交渉を行うことができます。
不動産資産の市場価値を査定する方法は複数あります。そのうち最も多く使われているのが比較による査定方法で、査定物件と似た特徴を持ち、同じエリアに所在する物件が実際に市場で売られた価格をもとに査定を行います。
不動産鑑定人は査定物件と似た特徴を持ち、同じエリアに所在する物件が実際に市場で売られた価格をもとに査定を行う必要があり、不動産業者の広告に記載されている提案価格をもとに市場価値の査定を行うことはできません。
一般的に言って、不動産業者の広告に記載されている提案価格には業者の手数料やそれ以外の費用、付加価値が物件の価値に上乗せされているので、それだけを目安に価値査定を行うことは不適当とされています。
フランスでは、不動産の売価はオープンデータであるDVF (“Demande de valeurs foncières”)ファイルに公表されています。不動産鑑定士はまたフランス公証人会が管理している不動産売価情報データベースB.I.E.N. databases (“Base d’Informations Economiques Notariales”) にアクセスして査定物件と似た特徴を持ち、同じエリアに所在する物件が実際に市場で売られた価格に関する情報を集めます。
フランスの不動産法で「居住面積」(surface habitable)とは、住居の専有面積から壁や仕切り、階段、ドア、窓などが占める面積を差し引いた面積を指します(建設住居法R156-1条)。
アパートの売買や賃貸借でよく引き合いに出される「Carrez」面積は、「居住面積」では含まれない、屋根裏部屋、物置、更衣室や化粧室など日常生活で使用しない住居の部分を含みます。鑑定人がアパートの価値査定で用いるのは「Carrez」面積です。
居住面積、「Carrez」面積どちらも、ベランダや地下室、駐車場等、住まいとして使用されない部分の面積は含みません。
隠れた瑕疵とは、物件を購入した時点で買主が発見できなかった物件の欠陥のことです。物件の欠陥が隠れた瑕疵と見なされるためには、以下のいずれかの場合にあたる必要があります(フランス民法1641条):
– その欠陥により物件がその用途に適さなくなる(例えば居住目的の物件が居住不可能になるなど)こと、または
– 物件の用途を大きく制限するため、買主がその欠陥を購入時に知っていたならばより低い価格で購入したはずであること。
隠れた瑕疵を発見してから2年以内に売主に対して訴訟を起こす必要があります。また物件の購入から20年の期間が経過した後は隠れた瑕疵を発見してから2年以内でも訴訟は提起できません。
隠れた瑕疵がある場合、買主は売主に対して、物件を返す代わりに売価全額の払い戻しを請求するか、または物件を返さずに売価の一部の払い戻しを請求する、いずれかのオプションがあります(民法1644条)。
買主は売主に対してまた、受けた損害の賠償を請求することができます(民法1645条)。
買主が売主に対して売価全額の払い戻しを請求し、勝訴して物件を返す場合には、訴訟を提起してから物件を返す日までの「占有補償金」(家賃に相当)を売主に支払う必要があります。
売価の減額請求をする場合には、隠れた瑕疵による物件の減価を評価する鑑定手続が行なわれます(破棄院第3部、2019年4月18日判決、上告番号18-14668)
シロアリの有無に関する技術的審査が売買契約署名の6か月前以内に行われた場合には、売主は瑕疵担保責任を負わず、技術的審査を行った業者が買主が受けた損害を賠償する責任が生じます(破棄院第3部2019年3月7日判決、上告番号17-31080)。
フランスの最高裁である破棄院の判例によると、売主の代理人は売買契約の第3者とはみなされないため、売主を代理する建築家が建築工事の欠陥を隠していた場合でも売主が瑕疵担保責任を負います。
売買契約が取り消され、代金を買主に返還してから売主は建築家に対して損害賠償を請求する訴訟を起こすことができます。
電気設備の隠された欠陥により、家に住む人の安全性を損なうものである場合には、電気工事を行った電気会社に対して、工事の引渡しから10年以内に施工不良を理由とする補修工事の請求訴訟を起こすことができます(民法1792-4-1条)。
施工不良に関する施工業者の責任に関する民法1792条以下の条項は「強行法規」とされているため、売買契約中でこれらの条項の適用を除外する免責特約を規定してもその特約は無効とされます(破棄院第3部、2020年3月19日判決、上告番号18-22983)。
施工業者は原則的に10年の責任をカバーする工事保険に加入しているので、訴訟の際には施行業者が加入している保険会社を訴訟に介入させ、損害賠償の支払いを保険から支払わせるようにする必要があります。
原則的に、納税者が日常の生活に利用している住居を売る場合には譲渡所得税は免税となります(一般租税法150U条)。
売主が海外に居住する場合、過去に主たる住居として使用していた住居を売る際、譲渡所得税が免除されるためには以下の2つの条件を満たすことが必要です(一般租税法244bis条、2018年12月28日法による改正):
• 当該住居の譲渡が、売主本人が海外での居住を始めた年の翌年の12月31日までに行われること
• 売主本人が海外での居住を始めてから譲渡日までの間、当該住居が一度も賃貸に出されなかったこと。
例えば日本に帰国したのが2018年1月の場合で、パリの元住居を賃貸に出さず、2019年末までにアパートを売れば譲渡所得税が免除されます。それ以降は免除されません。