デジタルサービス法(DSA)―違法コンテンツの通知制度の改善とLCEN第6条3に基づく急速審理手続の限界

2022年10月19日に採択され11月16日に発効した、デジタルサービスに関する規則(DSA法)は、現実社会で違法な行為をオンライン上でも違法とすることを目的とし、ホスティングサービスプロバイダー特に大型オンラインプラットフォームに対し、違法コンテンツの防止における新しい義務を制定した。

2000年のEU電子商指令2000/31と違いDSA法はEU規則であるため、加盟国に対して直接の拘束力(直接適用性)を持つ。そのためフランスで国内法化される必要なしにフランス法の体系に組み込まれ、フランスの裁判所はDSA法を直接適用して判決を下すことができる。

2024年2月17日以降全てのオンラインプラットフォームとインターネット仲介サービス提供者に適用されているDSA法は、特にホスティングサービスプロバイダー(オンラインプラットフォームを含む(DSA法第3条i))に対し、新しく違法行為の通知と通知後の対応に関するシステムを整備する義務(第16条)、及び違法コンテンツとしてアクセスやコンテンツの掲示が制限された者に対する理由説明義務(第17条)を課し、2000年のEU電子商指令2000/31を国内法化したLCEN法下での通知制度の問題を解消することを目指している。

DSA法はまたオンラインプラットフォームが違法コンテンツの流通に大きな役割を果たしていることから、伝達される情報のコンテンツモデレーションのための新しいシステムを整備する義務を規定し(DSA法第20-23条)、さらに月平均利用者数が4500万人以上で欧州委員会で2023年4月15日に指定された超大規模オンラインプラットフォームと超大規模検索エンジンに対し、システムリスク管理に関する特別規則を規定している(第33条-43条)。

 

I. プロバイダー、プラットフォーマーが伝達/保存する違法コンテンツについて損害賠償責任、刑事責任を追及するために必要な通知制度の改善

2000年のEU電子商指令2000/31はインターネットサービスプロバイダーやホスティングサービスプロバイダーはそれが伝達/保存するコンテンツが違法であった場合、違法行為や違法コンテンツを知らなかったことを条件にそれに対して損害賠償責任、刑事責任を一切負わないという原則を打ち出した(2000/31指令第15条)。Youtube、Facebook、Twitter等のプラットフォーム上の違法行為やコンテンツで被害を受けた者は従って、こうしたプロバイダーに対して違法行為を通知する手続を取り、プロバイダーが違法行為を知っていたがそれを止めさせるための必要な措置を取らなかったことを証明しなければならず、その通知手続を行わないとプロバイダーに対する損害賠償責任訴訟や、刑事告訴は非受理とされる。

DSA法施行前は、インターネット上の違法行為やコンテンツで被害を受けた者は電子商指令2000/31を国内法化したデジタル経済における信頼のための法律(通称LCEN 法)、第6条I.5の規定に沿って違法行為やコンテンツの通知をプロバイダーに対して行わなければならなかった。

LCEN法第6条I.5で規定された、プロバイダーに対する違法行為やコンテンツの通知に記載が義務づけられている事項は以下の通りである(2020年6月24日Avia法による改正前と後を比較):

 

2020624日法以前に行われた通知 2020624日法以後に行われた通知
日付 通知日を記載
通知者の身元 自然人の場合: 氏名、職業、住所、国籍、生年月日

法人の場合: 形態、会社名、本社所在地、代表者名

自然人の場合: 氏名、メールアドレス

法人の場合: 形態、会社名、メールアドレス

公的機関の場合:名称、メールアドレス

 

通知の宛先 宛先の名前と住所、法人の場合には会社名と本社所在地
違法行為の事実 違法とされる事実の説明とその発生地 違法とされる事実の説明とその発生地、場合によりアクセスリンクURL
正当な理由 コンテンツが削除されなければならない正当な理由、該当する法律の条文と事実の証明

 

コンテンツが削除またはアクセス不能にされなければならない正当な理由
通知に添付が必要な書類 違法とされるコンテンツの作者または編集者に、当該コンテンツの配信を停止、削除、変更することを要求した書簡のコピー、または違法とされるコンテンツの作者または編集者と連絡が取れないことを正当化する事情の説明

 

違法とされるコンテンツの作者または編集者に、当該コンテンツの配信を停止、削除、変更することを要求した書簡のコピー、または違法とされるコンテンツの作者または編集者と連絡が取れないことを正当化する事情の説明

 

実務上、被害者(その弁護士)はこの条文で定められた事項を漏れなく記載した書簡を作成し、該当するホストプロバイダーに受領証明付き書留郵便で送り、違法行為の通知日を証明する必要があった。この条文で定めれた事項が一つでも抜けていた場合には通知は無効とされ、プロバイダーが違法コンテンツを削除しなかった場合にも損害賠償責任訴訟や、刑事告訴を起こすことはできなかった。

フランス裁判所はこの条項を厳格に解釈し、破棄院は必要事項の記載が欠けた通知が行われた場合には全て、行為の違法性についてプロバイダーが認識していたことを証明しない、従ってプロバイダーが侵害コンテンツを削除しなかった、または削除を遅らせたとしても損害賠償責任は負わないという原則を2011年2月17日の二つの判決で打ち出した(AMEN判決、上告番号09-15.857、DAILYMOTION判決、上告番号09-67.896)。

任天堂ポケモン判決 (破棄院商事部、2025年2月26日判決、上告番号23-15966)

破棄院2011年2月17日判決で確立されたフランス裁判所の判例はインターネット上の違法行為の被害者がホストプロバイダーに対して提起する訴訟においてプロバイダーの応訴手段としてよく利用された。

任天堂社、ポケモンカンパニー、クリーチャーズ社、ゲームフリーク社が違法ゲームソフトのダウンロードをインターネット上で提供していたDStorage社に対して提起した損害賠償訴訟では、任天堂社とポケモンカンパニーの弁護士は2018年1月に書留郵便で違法ゲームソフトのダウンロードを可能にするリンクがあることをDStorage社に対して通知し、その通知をもとに2018年5月にパリ地方裁判所でDStorage社に対してホストプロバイダーの過失及び著作権侵害、商標権侵害を根拠に1 368 500ユーロの損害賠償を請求する訴訟を提起したが、同社は応訴で、2018年1月に任天堂社とポケモンカンパニーの弁護士が行なった通知にはLCEN法第6条I.5で規定された記載が義務づけられている事項のうち、通知者の身元に関する情報(形態、会社名、本社所在地、代表者名)、及び違法とされるコンテンツの作者または編集者と連絡が取れないことを正当化する事情の説明が欠けていたためDStorage社が違法行為の存在を知るには不十分であり無効であると主張した。

本件ではパリ地方裁判所(2021年5月25日判決、事件番号18/07397)、パリ控訴院判決(2023年4月12日判決、事件番号21/10585)共に任天堂社とポケモンカンパニーの弁護士が行なった通知はLCEN法第6条I.5の規定に適っていたと判示し、破棄院はDStorage社の上告を退ける判決を下したが、DStorage社に対して命じられた任天堂社とポケモンカンパニーの損害の賠償は第一審ではプロバイダーの不法行為及び商標権侵害の損害賠償として935 500ユーロ、控訴審ではプロバイダーの不法行為及のみの損害賠償としてその半額以下の 442 750ユーロしか認められず、7年の訴訟にかかった弁護士費用を差し引くとあまり残らない結果となった。

違法コンテンツの新しい通知システム

違法コンテンツの通知におけるこうした問題を解消するため、DSA法はホスティングサービスプロバイダーに対し、違法コンテンツの通知を電子的に行うためのシステムを整備する義務を課している。電子商指令2000/31を国内法化したLCEN法が権利者はLCEN法第6条I.5で定められた事項を網羅的に記載した書簡を受領証明の取れる形でホストプロバイダーに送達する必要があると規定したのに対し、DSA法では権利者がこうした事項を含んだ通知を正しく行うことができるようにする電子通知システムはホストプロバイダーが整備しなければならないと規定した (DSA法第16条)。

違法コンテンツの通知を受けたホストプロバイダーはできるだけ早期に、デユーデリジェンスを尽くし、恣意的でない客観的な方法で取るべき措置を決定しなければならず、ホストプロバイダーがその義務を果たさない場合には、違法コンテンツの被害者である権利者はホストプロバイダーに対して、不法行為を根拠に損害賠償請求訴訟を提起することができる。

DSA法はこの点新しく、各加盟国のデジタルサービスコーディネーター(フランスではARCOM)が認定する裁判外紛争解決機関による紛争の解決手続を規定している(DSA法第21条)。認定裁判外紛争解決機関のリストは欧州委員会のウェブサイト(リストを見る)に公示されているが、こうした機関のもとで紛争解決手続を提起した場合、訴訟の時効(不法行為は5年)を停止しないことに留意する必要がある。

 

II. 違法コンテンツの削除、配信停止を請求するための急速手続

LCEN法旧第6条I.8は、かつて「インターネット通信サービスのコンテンツにより生じた損害を防し、または差し止めさせるために必要なあらゆる措置」を請求するためのレフェレ(référé)または非対審請求手続(requête)を規定していたが、この規定は2021年8月24日の「共和国の諸原則を尊重するための法律」で改正され、以後は司法裁判所裁判所長の下での急速本案審理手続 (procédure accélérée au fond) で違法コンテンツの削除、配信停止、またはアクセスブロックといった措置を請求する必要がある。間違えてレフェレの手続で違法コンテンツの削除や配信停止を請求すると、司法裁判所裁判所長により請求は非受理とされる (パリ控訴院2023年2月17日判決、事件番号22/09609, Trustpilot A/S v. SARL Rose Passion)。DSA法はこの規定は改正せずに、LCEN法の条文番号を第6条I.8から第6条3と変更した。

Sheinプラットフォームのリスクを理由にLCEN法第6条3の急速手続でアクセスブロックをフランス政府が請求し、裁判所により却下された事件

2025年11月、フランスは国としてLCEN法第6-3条を根拠に、違法製品が販売されていたSheinのフランス語サイトへのアクセス完全ブロックを請求する急速本案審理手続をパリ司法裁判所裁判所長の下で提起したが、2025年12月19日の判決で敗訴した (フランス経済省のプレスリリース)。同判決では裁判長は、フランス国家が請求したアクセス完全ブロック措置は明らかに均衡の原則に反し、経済的自由権を害すると判断し、ISSL社に対して、問題製品の販売を未成年者に販売しないための必要な措置の導入と、違法行為ごとの10000ユーロの遅滞罰金のみ命じた。

Sheinは問題の製品を自発的にプラットフォームから削除したが、フランス国は本判決に控訴を行い、控訴審でフランス国は「違法製品の販売が開始するリスクがある」としてSheinプラットフォーム中のマーケットプレイスへのアクセスブロックを請求した。パリ控訴院は2026年3月19日の判決で、Sheinが問題の製品をプラットフォームから削除したことでフランス国が請求の根拠として挙げている違法製品の販売が再開するリスクは証明されていないとして第一審判決を全面的に確定させた(パリ控訴院プレスリリース)。

 

III. システミック・リスク管理 –Sheinに対する正式調査開始と課されうる罰則

DSA法は、超大規模オンラインプラットフォーム (« very large online platforms (VLOPs) ») と超大規模検索エンジン (« very large online search engines (VLOSEs) »)に対し、自社のサービスおよび関連システム(アルゴリズムシステムを含む)の設計または運用、あるいは当該サービスの利用に起因して、EU域内で生じるあらゆるシステミック・リスクを誠実に特定、分析、および評価する義務を定めており(第33条)、違反があった場合、欧州委員会は、超大規模プラットフォームまたは超大規模オンライン検索エンジンの提供者に対し、その年間世界売上高の最大6%に相当する罰金を科すことができると規定している(DSA法第74条)。

2026年2月、欧州委員会は、Sheinの「中毒性のある」設計、レコメンデーションシステムの透明性の欠如、および児童ポルノを含む違法な商品の販売を理由に、同社に対する調査を正式に開始した。