租税法・一般企業法務

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取締役の「任務懈怠」(faute de gestion)は、法律でその概念が規定されているのではなく、裁判において裁判官がケースバイケースで任務懈怠があるか否かを判断しますが、一般的に会社の利益に反する取締役の行為、不作為、過失を指します。例えば会社に損害を与える過剰な支出、事前の調査を伴わない無謀な投資、会社の会計管理の不備や、是正措置(経営改善や撤退など)を講じることなく赤字事業を漫然と継続した場合に取締役の任務懈怠が成立するとされています。

会社の株主は、単独でまたは共同で、任務懈怠で会社に損害を与えた取締役に対して訴訟を提起することができます(株主代表訴訟、フランス語で”action ut singuli“)。この訴訟では取締役の責任が裁判所によって認められ、損害賠償の支払が命じられる場合、株主ではなく会社に対して損害賠償が支払われます(民法第1843-5条)。株主代表訴訟の時効は取締役が任務懈怠で会社に損害を与えた日、またはその事実が隠蔽されていた場合にはそれが発覚した日から3年です(商法第L223-23条(有限会社)、第L225-254条(株式会社))。

民事会社の取締役に対する株主代表訴訟の時効は、不法行為責任追及訴訟の時効に関する民法の一般規定の適用により5年です(民法第2224条)。

取締役の任務懈怠の立証責任は、原告である株主にあります。

民事訴訟法第30条と第31条で規定されている訴訟の受理要件(訴えの利益、当事者適格および訴訟能力)に加えて、フランスの株主代表訴訟で原告となる株主は、必ず取締役だけでなく会社を訴訟に介入させる必要があり、会社が訴訟の当事者になっていない場合には、株主の取締役に対する請求は裁判所により非受理とされます(破棄院商事部、2025年7月9日判決、上告番号24-14.565)。

会社と訴訟における会社の代表者との間に利益相反がある場合(現職で会社の代表者である取締役を訴える場合)には、株主は裁判所に対し、訴訟で会社を代表する臨時代理人(mandataire ad hoc)を選任するよう請求する必要があります(R223-32条(SARL)、R225-170条(SA))。利益相反があるにもかかわらず訴えられた取締役が訴訟で会社を代表する場合には、訴訟は裁判所により非受理とされます(破棄院商事部、2022年11月9日判決、上告番号20-19.077)。

有限会社では最低10%、株式会社では最低5%の株式を保有する株主は、裁判所に対し、会社の経営監査鑑定(expertise comptable et de gestion )を行う1人または複数の鑑定人の選任を請求することができます(商法第L223-37条(有限会社)、第L225-231条(株式会社))。この請求は商事裁判所の裁判所長のもとで、「急速本案手続」(procéduré accélérée au fond)という手続で行います(民事訴訟法第481-1条)。

株主はまた商事裁判所の裁判所長のもとでのレフェレ(référé)の手続で、民事訴訟法145条の規定に基づき、将来取締役に対する損害賠償請求訴訟を提起するために会計処理上の任務懈怠を証明する必要があることを立証して、会社の会計監査鑑定手続を請求することができます。この場合には最低株式保有数の条件はありません。

取締役の第三者に対する損害賠償責任が認められるためには。取締役の任務懈怠がその業務から「切り離される」ものであること(分離可能な過失)、及びその任務懈怠が取締役個人のものであることを立証する必要があります。

フランス破棄院の判例では、取締役の任務懈怠がその業務から「切り離される」ものであること(「分離可能な過失」”faute détachable (séparable)”)とされるためには、その任務懈怠について故意があったこと、そして重大な過失であり、取締役の通常の職務遂行と相容れないものであることが必要とされています。

判例では、例えば営業権譲渡において取締役が営業権の買主を欺くために、会社の財務状況を著しく不正確に提示した場合(破棄院商事部2020年11月4日判決、 上告番号18-19.747号)や、義務付けられた保険への加入を意図的に怠った場合(破棄院商事部2022年9月7日判決、上告番号20-20.404、20-20.538)に、取締役の「分離可能な過失」が成立するとされています。

取締役による任務懈怠が故意のものでない、または重大性を欠く場合や、取締役が通常の職務遂行の中で犯したものである場合には、それにより損害を受けた第三者は取締役個人ではなく会社に対して損害賠償訴訟を提起する必要があります。

商法第L651-2条は、会社の破産手続(liquidation judiciaire)において残余財産が不足する場合、会社の取締役は、その任務懈怠が破産会社の残余財産の不足をもたらしたと見なされる場合には、破産会社の資産不足額の全部または一部を支払うよう命じられることがあると規定しています(「残余財産不足に対する責任」(responsabilité pour insuffisance d’actif))。

2016年12月9日の法律第2016-1691号(通称「サパンII法」)は同条に「ただし取締役が会社の経営において単なる過失を犯した場合には残余財産不足に対する責任を負わない。」という規定を加え、残余財産不足をもたらした過失とそうでない単なる過失を区別しており、破産会社の管財人が取締役に対して残余財産不足に対する責任を追及するためには、その過失が単なる経営上の過失ではないことを立証する必要があります(破棄院商事部、2024年10月2日判決、上告番号23-15.995)。

取締役が会社が支払不能になってから45日という法廷期限内に破産の届出を行わなかった場合、その懈怠が破産会社の残余財産の不足をもたらしたと見なされる場合には取締役に対して破産会社の資産不足額の全部または一部を支払うよう命じられますが、破棄院の判例では、この会社の支払不能は事実上の支払不能発生時ではなく、破産手続開始決定で記載される支払不能日であるとされています。

従って、破産手続開始決定に記載された支払不能日が破産届出日である場合には、取締役は残余財産不足に対する責任を問われず(破棄院商事部2017年4月20日判決、上告番号15-19.465、2018年7月4日判決、上告番号14-20.117)、逆に破産手続開始決定に記載された支払不能日が破産届出日の数か月前である場合には、取締役は残余財産不足に対する責任を負います(破棄院商事部2017年6月28日判決、上告番号14-29.936)。

有限会社では株式会社のように資本金の最低額が法律で定められていないため、1ユーロの資本金でも設立することができ、会社設立のコストを抑えることができます。

有限会社は一人の社員でも設立できます(その場合には「EURL」(一人有限会社)と呼ばれます)。有限会社最高社員数は100人です。

出資者である社員は資本金全額の最低20%を会社設立時に会社の口座に支払います。残りの資本金は会社設立登記から5年以内に出資者である社員から会社の口座に支払われる必要があります。

会社の定款で社長の権限が列挙されている場合、定款で社長の権限として認められていない業務(一定の種類の契約締結や重要なオペレーション)を社長が行うためには、株主総会で許可を得る必要があります。

会社の定款に社長の権限を列挙する条項が含まれていない場合には、社長は会社の利益に適う全ての管理業務を行うことができます(フランス商法L221-4条)。

定款で社員死亡時の会社の解散が規定されていない限り、会社は継続します。

故社員の相続人が一人の場合には、その相続人が一人有限会社(EURL)の社員となり、故社員の相続人が複数の場合には、相続人全てがオーナーとなる有限会社(SARL)となります。

第三者に対する損害賠償責任を社長個人に負わせるためには、その行為が社長の職務から切り離されうる過失であることを証明する必要があります。社長の職務から切り離されうる過失の概念は判例で定義されており、意図的、かつ職務の通常的な遂行ではありえないほどの重大な過失とされています。そのような過失を社長が犯したことが証明される場合には、被害者である第三者は社長個人に対して損害賠償を請求できます。

株式会社の資本金の最低額は37000ユーロです。例外的に法律で、特定の業種の株式会社にはこれとは違う最低資本金額が定められています(例えば新聞社や雑誌社の最低資本金は300ユーロ)。いずれの場合でも株式会社は資本金額を会社のHPや社用便箋等に必ず表示する義務があります。

定時株主総会は、臨時株主総会で決議されることが法律で義務付けられている事項以外の全ての事項(特に年次決算の承認、取締役の任命と解任、特別な契約の締結等)について決議することができます。

臨時株主総会で決議することが義務づけられている事項は会社の定款変更を要する事項で、例えば社名(商号)の変更、本社の移転、資本金増額、会社の目的変更などがそれに当たります。

定時株主総会の定足数は第一回目の招集では全株主数(代理を含む)の最低5分の1とされています。第2回目の招集では定足数はありません。

決議は出席する株主(代理出席も含む)の過半数で承認されます。

臨時株主総会の定足数は第一回目の招集では全株主数(代理を含む)の最低4分の1、第二回目の招集で全株主数(代理を含む)の最低5分の1、決議は出席する株主(代理出席も含む)の3分の2で承認されます。

フランス法では上場企業に適用される以下の二つのルールを設けています(商法第L225-18-1条):

– 取締役会を構成する男性と女性の取締役の数がそれぞれ40%以上であること
– 取締役数が8名以下の取締役会では男性と女性の取締役の数の差が2名を超えないこと。

取締役の辞職や解任等で取締役会を構成する男性と女性の取締役の数がこのルールを満たさなくなった場合には、取締役会は6ヶ月以内に新しい取締役の暫定的な選任を行う必要があります。
本ルールに反した取締役の選任が行なわれた場合には、その選任は無効となり、当該取締役には役員報酬は支払われません。

執行役の最高数は5人(上場企業でない場合)または7人(上場企業の場合)(商法L L225-58条)。執行役は必ず自然人である必要があり、法人は株式会社の執行役に任命されることはできません。
監査役会は最低3人、最高18人の監査役で構成されます(商法L L225-59条)。法人も株式会社の監査役となることができますが、法人の監査役は代表者を任命する必要があります(商法L225-76条)。

フランスで最も用いられている会社の形態は簡易株式会社(SAS)です。

フランス法人、外国法人に関わらず全ての法人が簡易株式会社の社員になることができます。

簡易株式会社は設立や解散・清算においては株式会社と同じ法律の規定が適用されますが、会社の組織と運営方法を会社の定款の中で社員が自由に規定することができることが特徴です。

法律で最低資本金額が定められている一定の業種を除き、簡易株式会社の最低資本金額は規定されていません。1ユーロでも簡易株式会社を設立することができます。

簡易株式会社では取締役と会社間で金銭貸与に関する契約や法人口座をマイナスにする契約、個人的な債務の連帯保証契約を締結することが禁じられ、そうした契約が結ばれた場合には無効となります。

以下の3つの基準のうち最低2つの経営規模基準を満たす簡易株式会社には、会計監査人の任命が義務づけられています:

– 貸借対照表総額:4,000,000ユーロ
– 税引前売上高:8,000,000ユーロ
– 平均従業員数:50名

(商法第L227-9-1条、D221-5条)

多数派社員が自らの報酬額として過度な報酬を総会で承認決議させる場合には業務上横領罪が成立します(破棄院刑事部、1988年12月13日判決、上告番号87-82.268)。

業務上横領罪は商法L241-3条4項で規定されており、法定刑は5年以下の懲役と375 000ユーロ以下の罰金となっています。この法定刑は、業務上横領がフランス国外に所在する銀行の口座や契約を使って行われた場合や、共犯者がフランス国外にいる場合には、7年以下の懲役と500 000ユーロ以下の罰金に引き上げられます。

 

フランス法で業務上横領罪の構成要件の一つである「悪意」(mauvaise foi) とは、取締役が会社の物を横領することで害を与えることを意識していることを指し、犯人が横領行為の時点でそのような意識があったかを裁判所が判断します。

2017年2月27日法による改正後、業務上横領罪の公訴時効はそれまでの3年から6年に延長されています。横領行為の時点ではなく、横領行為が明らかになった時点が6年の時効の起算点となります。

業務上横領罪は会社の役員、すなわち有限会社では社長、株式会社では社長、取締役、副社長、執行役または監査役会のメンバーに対してのみ適用されます。経理担当社員による会社の資金不正流用には業務上横領罪ではなく、刑法第314-1条から第314-4条で規定されている背任罪が適用されます。

粉飾決算の構成要件は会社の取締役が、会社の実際の財務状況を隠匿するために虚偽の決算、財務状況・資産に関する報告を行うことを指します(=特別詐欺、有限会社 : 商法L241-3 条、3°、株式会社:商法L242-6 条、2°)。法定刑は業務上横領罪と同じく、5年以下の懲役と375 000ユーロ以下の罰金です。

フランス法で租税回避行為 (abus de droit fiscal) は税務訴訟法(Livre des procédures fiscales, LPF)第L64条と第L64A条に規定され、以下の2種類に分けられます:

1. 偽装による租税回避行為 : 実際には存在しないオペレーション(スキーム)や取引を用いて税負担を軽減または回避する行為(税務訴訟法第L64条第1項)

2. 法律の悪用による租税回避行為 : オペレーション(スキーム)や取引は実在するが、法律の規定を本来の目的と反する形で利用し、税負担を軽減または回避する行為。

法律の悪用による租税回避行為には租税回避の目的のみで行われる場合(税務訴訟法L64条第2項)と、租税回避の目的だけではないがそれが主である場合(税務訴訟法第L64A条)が区別され、適用される罰則が異なります。

偽装による租税回避行為には、例えば贈与税を逃れる目的の売買を装った低額譲渡、給与を控除対象となる経費として計上し税負担を軽減する目的で交わされた架空の雇用契約、相続税の対象となる遺産額を減らすために作成された債務承認弁済契約書、決算書上出費を増やして法人税を減額させる目的で同一グループに属する2社間で締結された商事賃貸借契約などがあります。

法律の悪用による租税回避行為は、オペレーション(スキーム)や取引は実在するが、経済的実体を欠いている場合に成立します。

法律の悪用による租税回避行為には例えば、不動産の譲渡所得税を排除する目的で売却直前に物件を譲渡するオペレーション(フランスで”donation-cession”と呼ばれる)で、譲受人から売却代金の全額を取り戻す場合、経済的実体を欠く会社組織や相互持株構造を用いた租税回避スキーム、税率が低い国への居住地移転などがあります。

租税当局により租税回避行為が成立すると判断されると、税制上の優遇措置が取消され、本来払うべき税金の支払いが命じられます。

租税回避行為が税務訴訟法第L64条で規定された行為(偽装による租税回避行為または租税回避の目的のみで行われた法律の悪用による租税回避行為)に当たる場合には、追徴課税として80%増額した額の支払が命じられます。

納税者自身が租税回避行為を計画しなかった場合や、租税回避行為による税金の減額や排除を直接受けなかった場合には、追徴課税の加算額は40%となります(一般租税法第1729条)。

一方、租税回避行為が税務訴訟法第L64A条で規定された行為(租税回避を主な目的として行われた法律の悪用による租税回避行為)に当たる場合には、追徴課税は適用されず、延滞利息のみが適用されます。

租税回避行為は、実際には存在しない行為、または外見上合法でありながら、通常とは異なる方法で法律の規定を利用し、税負担を軽減、回避する行為を指します。

一方脱税は、脱税は、偽造文書の使用、所得の申告隠蔽、あるいは海外の銀行口座の申告漏れといった違法行為により税負担を逃れる行為で、刑事罰の対象となります(懲役5年および罰金50万ユーロ(個人の場合)、または罰金250万ユーロ (法人の場合))。

税務訴訟法第228条の規定に基づき、租税回避行為を理由とする追徴税額が10万ユーロを超える場合には税務当局は検察官に通報する義務があり、検察官が脱税と認定する場合には刑事訴追が行なわれます。

CRS(共通報告基準)を通じて税務当局が納税者の海外の銀行口座を発見した場合、申告されていない口座1つにつき1500ユーロの定額罰金、または口座の所得(利子や配当、売却益など)に対して納付すべき税額に80%の追徴課税を適用します。

申告漏れに意図的な隠蔽があったと認められる場合には、脱税として刑事罰の対象となり、最高懲役5年および50万ユーロの罰金、加重事由(偽名によるオフショア口座や法人を利用して所得を隠した場合など)がある場合には最高懲役7年および300万ユーロの罰金に処されます(一般租税法第1741条)。

親子間の資産承継で、不動産売却前の譲渡は、譲渡所得税と譲渡税両方が課税されることを回避できる点でメリットがあり、広く用いられている方法です。

不動産資産や不動産民事会社(SCI)の持分を第三者に売却するにあたり、まず子供に贈与を行い、その後で子供から第三者に贈与と同じ価格で売却すると、贈与税のみ課税され、譲渡所得税を排除することができますが、贈与税は親子間の贈与であるためフランスでは子供1人あたり10万ユーロの非課税枠が適用されます。従ってこの方法はこの非課税枠を適用した贈与税の額が、不動産資産または持分にかかる譲渡所得税(譲渡益の36.2%)の額よりも低い場合に有利です。

しかし、贈与を行った親が譲渡後に子供から売却代金を取り戻す場合には、贈与に必要な「無償の意思」(民法第894条)に反するため、租税回避行為として追徴課税の対象となります(国務院、2018年2月5日判決、第409718号、 ナント行政控訴院、2020年7月2日判決、第18NT01415号)。

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