会社法・租税法

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有限会社では株式会社のように資本金の最低額が法律で定められていないため、1ユーロの資本金でも設立することができ、会社設立のコストを抑えることができます。
有限会社は一人の社員でも設立できます(その場合には「EURL」(一人有限会社)と呼ばれます)。有限会社最高社員数は100人です。
出資者である社員は資本金全額の最低20%を会社設立時に会社の口座に支払います。残りの資本金は会社設立登記から5年以内に出資者である社員から会社の口座に支払われる必要があります。
会社の定款で社長の権限が列挙されている場合、定款で社長の権限として認められていない業務(一定の種類の契約締結や重要なオペレーション)を社長が行うためには、株主総会で許可を得る必要があります。
会社の定款に社長の権限を列挙する条項が含まれていない場合には、社長は会社の利益に適う全ての管理業務を行うことができます(フランス商法L221-4条)。
定款で社員死亡時の会社の解散が規定されていない限り、会社は継続します。
故社員の相続人が一人の場合には、その相続人が一人有限会社(EURL)の社員となり、故社員の相続人が複数の場合には、相続人全てがオーナーとなる有限会社(SARL)となります。
第三者に対する損害賠償責任を社長個人に負わせるためには、その行為が社長の職務から切り離されうる過失であることを証明する必要があります。社長の職務から切り離されうる過失の概念は判例で定義されており、意図的、かつ職務の通常的な遂行ではありえないほどの重大な過失とされています。そのような過失を社長が犯したことが証明される場合には、被害者である第三者は社長個人に対して損害賠償を請求できます。
社長の解任は法律上原則的に自由で、社長の解任を禁止したり制限する定款の規定は無効となりますが、解任が正当な理由なく行われた場合には、社長は受けた損害の賠償を会社に対して請求することができます(商法第L223-25条1項)。
一方社長の解任の際に社員が社長に対して誹謗中傷的な態度を取った場合には、解任は濫用的な解任となります。濫用的な社長の解任の場合には、裁判所によって会社に対し、元社長が受けた損害、特に精神的損害の賠償が命じられます。
株式会社の資本金の最低額は37000ユーロです。例外的に法律で、特定の業種の株式会社にはこれとは違う最低資本金額が定められています(例えば新聞社や雑誌社の最低資本金は300ユーロ)。いずれの場合でも株式会社は資本金額を会社のHPや社用便箋等に必ず表示する義務があります。
定時株主総会は、臨時株主総会で決議されることが法律で義務付けられている事項以外の全ての事項(特に年次決算の承認、取締役の任命と解任、特別な契約の締結等)について決議することができます。
臨時株主総会で決議することが義務づけられている事項は会社の定款変更を要する事項で、例えば社名(商号)の変更、本社の移転、資本金増額、会社の目的変更などがそれに当たります。
定時株主総会の定足数は第一回目の招集では全株主数(代理を含む)の最低5分の1とされています。第2回目の招集では定足数はありません。
決議は出席する株主(代理出席も含む)の過半数で承認されます。
臨時株主総会の定足数は第一回目の招集では全株主数(代理を含む)の最低4分の1、第二回目の招集で全株主数(代理を含む)の最低5分の1、決議は出席する株主(代理出席も含む)の3分の2で承認されます。
フランス法では上場企業に適用される以下の二つのルールを設けています(商法第L225-18-1条):
– 取締役会を構成する男性と女性の取締役の数がそれぞれ40%以上であること
– 取締役数が8名以下の取締役会では男性と女性の取締役の数の差が2名を超えないこと。
取締役の辞職や解任等で取締役会を構成する男性と女性の取締役の数がこのルールを満たさなくなった場合には、取締役会は6ヶ月以内に新しい取締役の暫定的な選任を行う必要があります。
本ルールに反した取締役の選任が行なわれた場合には、その選任は無効となり、当該取締役には役員報酬は支払われません。
執行役の最高数は5人(上場企業でない場合)または7人(上場企業の場合)(商法L L225-58条)。執行役は必ず自然人である必要があり、法人は株式会社の執行役に任命されることはできません。
監査役会は最低3人、最高18人の監査役で構成されます(商法L L225-59条)。法人も株式会社の監査役となることができますが、法人の監査役は代表者を任命する必要があります(商法L225-76条)。
フランスで最も用いられている会社の形態は簡易株式会社(SAS)です。
フランス法人、外国法人に関わらず全ての法人が簡易株式会社の社員になることができます。
簡易株式会社は設立や解散・清算においては株式会社と同じ法律の規定が適用されますが、会社の組織と運営方法を会社の定款の中で社員が自由に規定することができることが特徴です。
法律で最低資本金額が定められている一定の業種を除き、簡易株式会社の最低資本金額は規定されていません。1ユーロでも簡易株式会社を設立することができます。
簡易株式会社では取締役と会社間で金銭貸与に関する契約や法人口座をマイナスにする契約、個人的な債務の連帯保証契約を締結することが禁じられ、そうした契約が結ばれた場合には無効となります。
以下の3つの基準のうち最低2つの経営規模基準を満たす簡易株式会社には、会計監査人の任命が義務づけられています:
– 貸借対照表総額:4,000,000ユーロ
– 税引前売上高:8,000,000ユーロ
– 平均従業員数:50名
(商法第L227-9-1条、D221-5条)
多数派社員が自らの報酬額として過度な報酬を総会で承認決議させる場合には業務上横領罪が成立します(破棄院刑事部、1988年12月13日判決、上告番号87-82.268)。
業務上横領罪は商法L241-3条4項で規定されており、法定刑は5年以下の懲役と375 000ユーロ以下の罰金となっています。この法定刑は、業務上横領がフランス国外に所在する銀行の口座や契約を使って行われた場合や、共犯者がフランス国外にいる場合には、7年以下の懲役と500 000ユーロ以下の罰金に引き上げられます。
フランス法で業務上横領罪の構成要件の一つである「悪意」(mauvaise foi) とは、取締役が会社の物を横領することで害を与えることを意識していることを指し、犯人が横領行為の時点でそのような意識があったかを裁判所が判断します。
2017年2月27日法による改正後、業務上横領罪の公訴時効はそれまでの3年から6年に延長されています。横領行為の時点ではなく、横領行為が明らかになった時点が6年の時効の起算点となります。
業務上横領罪は会社の役員、すなわち有限会社では社長、株式会社では社長、取締役、副社長、執行役または監査役会のメンバーに対してのみ適用されます。経理担当社員による会社の資金不正流用には業務上横領罪ではなく、刑法第314-1条から第314-4条で規定されている背任罪が適用されます。
粉飾決算の構成要件は会社の取締役が、会社の実際の財務状況を隠匿するために虚偽の決算、財務状況・資産に関する報告を行うことを指します(=特別詐欺、有限会社 : 商法L241-3 条、3°、株式会社:商法L242-6 条、2°)。法定刑は業務上横領罪と同じく、5年以下の懲役と375 000ユーロ以下の罰金です。
IFI : Real estate wealth tax
