フランス契約法の判例

代理商契約終了時の補償金 : 委任者が補償金の支払を免れるための条件 

(破棄院商事部2016年6月21日判決、上告番号15-10948、Dgpp c. Celinho)

フランスでは1958年12月23日の政令で制度化された代理商(agent commercial)の制度は、1986年12月18日のEU指令(86/653/CEE)によりEU加盟国で統一され、1992年6月19日法第92-506号により、商法第L134-1条からL134-17条として国内法化されている。

商法第L134-1条は、代理商を以下の条件を満たす委任契約の受任者であると定義している:

  • 独立性―委任者との間に従属的関係がないこと
  • 継続して委任者のために、委任者を代理して売買契約やサービス提供契約の交渉を行い、場合によりそれらの契約の締結を行う業務を行うこと。

ある会社の商品やサービスの販売促進を行う任務を負う者(個人または法人)が商法第L134-1条の代理商と見なされるためには従って、委任者を代理して売買契約やサービス提供契約の交渉を行う権限、具体的には商品やサービスの価格を顧客と交渉する権限を行使していなければならない。単にある会社の商品やサービスの販売促進活動を行うのみでその会社が事前に決めた価格を適用しているだけの受任者は、代理商とは認められない(破棄院商事部2014年12月9日判決、上告番号13-22476、Duravit c. ACE ; 2011年4月27日判決、上告番号10-14851、Cephalon c. Exan Limited ; 2008年1月15日判決、上告番号06-14698、SFR c. RCE ; 2015年1月20日判決、上告番号13-24231、Covidien c. M.X)。

代理商契約により委任者はターゲットの市場、顧客層に通じた者を通じて効果的にその商品やサービスを提供することができ、一方受任者の代理商は委任者の商品やサービスの提供を通じてコミッションの支払いを受けることができるが、契約が終了する際に代理商が開拓した顧客は委任者に帰属し代理商は顧客を失うことから、法律で代理商契約の終了時に代理商を保護する強行規定が定められている。

代理商契約終了時に代理商を保護する強行規定の一つは、解約の予告期間である。この予告期間は商法第L 134-11条、第2項により以下の通り定められており、当事者は契約でこれより短い予告期間を定めることはできない。

  • 1年目の代理商契約:1ヶ月
  • 2年目の代理商契約:2ヶ月
  • 3年目以降の代理商契約:3ヶ月

委任者は代理商の重過失(:契約の遂行を不可能にするほど重大な過失)を証明する場合、または不可抗力が存在する場合を除き、この予告期間を置いて代理商契約を解約する義務があり、この義務を怠る場合には代理商は予告期間に対応するコミッションの支払いを請求することができる。

代理商の保護規定の二つ目は、契約終了時の補償金の支払義務である。代理商は代理商契約が終了することにより受ける損害を補償する補償金の支払いを受ける権利があり、この権利を行使するためには契約終了から1年以内に委任者に対してそのことを通知すれば足りる(商法第L 134-12条)。

代理商に支払われる契約終了補償金の額は法律で規定されていないが、商慣習と判例により、代理商の2年分のコミッションに相当する額とされている。この2年分のコミッションの算定には、過去3年間に代理商が得たコミッションの平均値に2を掛けた額が用いられ、訴訟の場合に当事者がこれより多い、または少ない代理商の損害を証明しない限り適用される。

代理商契約終了時に代理商を保護する最後の強行規定は、代理商の競業避止義務に関するものである。代理商契約に契約終了後代理商に委任者と競業する事業を営むことを禁止する条項を規定する場合、競業が禁止される地域と事業の内容は代理商契約の対象地域と商品・サービスに限定され、代理商の競業避止義務の存続期間は契約終了から2年以上の期間を定めることができない(商法第L 134-14条)。

これらの強行規定に反する代理商契約の条項は全て無効となる(商法第L 134-16条)。

これらの保護規定で最も重要なのは契約終了補償金の支払義務であるが、代理商は、契約終了補償金の支払いを請求して委任者を訴える場合、商法第L 134-12条の契約終了補償金だけでなく、委任者が商法第L 134-11条で規定された予告期間を守らなかった場合にはその予告期間補償金、また委任者が解約権を濫用した場合には民法の不法行為の規定に基づいて濫用的解約の損害賠償も合わせて請求することができる。

一方、代理商契約には商法第442-6, I条5項の継続的取引関係終了における賠償責任に関する規定は適用されず、代理商契約の期間が数十年に亘る長期のものであっても、代理商は契約終了補償金に加えて継続的取引関係終了の賠償金を請求することはできない。

商法第L 134-13条では、以下の場合には委任者は代理商に契約終了補償金を支払う義務を負わないと規定している:

  • 代理商が重過失を犯した場合
  • 契約が代理商自らの意思で終了した場合。

委任者は、代理商契約終了に際してこれらいずれかの事情が存在することを証明すれば、契約終了補償金の支払いを免れることができる。

訴訟において、これらの事情を存在することを証明する立証責任は常に委任者が負う。契約終了補償金請求訴訟を提起するのが代理商であっても、代理商はその請求が認められるために商法第L 134-13条の事情が存在しないこと、契約が委任者の意思で終了したことを証明する義務はない(破棄院商事部2012年6月26日判決、上告番号11-19446、Toleco c. Comeltec ; 2011年2月8日判決、上告番号10-30527、Planchet c. Emile Garcin Provence)。

本判決ではこの原則が確認された。

本件ではレンヌに所在する有限会社DGPP社が、靴のメーカーCELINHO社に対して、代理商契約の終了補償金と予告期間補償金を請求し訴えたものである。

裁判でDGPP社は、CELINHO社が2011年8月23日に口頭で契約関係の終了を伝え、その後商品を供給しなかったため、代理商としての活動が不可能となったことを主張し、2011年10月3日付けでCELINHO社に通達された契約再開を要請する履行催促状を提出していた。一方契約関係の終了が書面で通知されていなかったことから、契約関係が委任者の意思により終了した証拠、そして契約が提出していなか2011年8月に終了した証拠は提出していなかった。

第一審、控訴審ともにDGPP社の請求を認め、CELINHO社に対し、同社が2011年8月末に予告期間を置かずに終了した代理商契約の終了補償金と予告期間補償金の支払いを命じたため、CELINHO社は、代理商契約が委任者の意思で終了したことを証明する責任は補償金を請求する代理商にあり、2011年8月23日に契約が終了した証拠が提出されていない以上、控訴院が2011年8月末を契約の終了時点として予告期間補償金の支払いを命じたことは「債務の履行を請求する者は債務の存在を証明しなければならない」と規定する民法1315条の規定に違反するとして上告を行った。

破棄院は2016年6月21日の判決で、控訴院が当事者により提出された事情に基づいて本代理商契約がCELINHO社の意思により2011年8月末に終了したと判示したことは立証責任を転換するものではないとして、CELINHO社の上告を却下した。